018 三つ子の奴隷Ⅴ
「うん? ああ、飯だよ、飯。腹が減ったからな。近くの店にするけどいいよな?」
「構いませんけど……」
と、三つ子の一番下の奴が話しかけてきた。
「ねぇ、あいつについて行って大丈夫なの? 今、ここで逃げる事だってできるのよ」
「そうですね。ですけど、彼はたぶんそんなに悪い人ではないと思いますよ」
「そうかしら?」
「私もそう思う……」
「二葉と三久がそう言うなら仕方ないわね……」
どうやらこの三つ子たちは未だに俺の事を疑っているようだ。特にショートカットの奴はこの三人の中で一番警戒している。
「ほら、急げ! 置いていくぞ」
そんなこと気にせずにそのままセントラルの中央を目掛けて再び歩き出す。
俺が前を歩き、三つ子が大体二、三メートル離れた位置を歩く。これが今の心の距離だ。さすがの俺も少し傷ついてしまうものだ。
目の前に見えた少しおしゃれなレストランを見つけると、店内を少し見て、ドアを開けてずかずかと中へ入っていった。三人もその後ろから店内に入り、奥の席に座った俺の席のテーブルの向かい側の席に三人揃って静かに座る。
女性店員が来ると、
「ええと、俺はステーキ定食を……お前らはどうする?」
「三人ともレディースランチセットで……」
と、一番左に座っている三女が言った。
それからしばらくして、料理が来るまでの間、俺達は話し合いをした。
「まあ、気楽にしてくれ。俺もそこまでお前たちを奴隷扱いなんてする気は無いからさ……。それよりもここから脱出する方法が知りたい方だが……」
俺は少しやわらかい表情で優しく話し始めた。
「そんなのありませんよ。私達でさえ、最初はそう思っていましたがこれが現実なのです」
三女がそう言った。
「そうか……。ああ、そう言えば、まだ名前を言っていなかったな。俺は桜井裕也だ」
「私は黒川一花」
「二葉」
「三久です」
右から順に一、二、三か……。分かりやすい名前だな。
「それで一花達は、いつからこの世界にいるんだ?」
「そうね。大体、一年前くらいかしら?」