015 三つ子の奴隷Ⅱ
「い、いやっ……」
と、一番左にいる少女が小さな声を上げる。
「ふん。これでお前たちは俺の者だ！ おい、これ以上待っても無駄だろうが！ 早く、決断を下せ！」
ああいう男がいるから嫌なんだよ、こういった世界は！ どの世界でも一緒だ。こういった権力者に逆らうことのできない世の中。だが、俺にはどうすることもできない……。
だけど……『目の前で泣いている女の子がいるなら助けてやれ』か。誰だっけな、人にはいい事をすれば自分に返ってくるって言ったのは……。
「待て！」
俺はいつの間にか声を上げて、手を挙げていた。
「俺は二億Ｇだ！ それだったらいいよな？」
「え、あ、はい、構いませんけど……」
総奴隷商人に申し立てると、あっさりと承認される。前の方でさっき一億出していた男が悔しそうに俺の方を睨みつけてくる。
「それでは他に二億以上の値を出される方はいらっしゃいませんか？ ……いないようですのでこれにより、今回高額値が出ました！」
と、オークションの終了を知らせる鐘が鳴った。
「以上を持ちまして、今回のイベントを終了します。この後、主になれる方はこちらまで来てください」
ようやく終わった。
だが、たった数日の間で三億あった金額がたった一日足らずで二億もこの手から消えるとは思わなかった。
はぁ……。この先どうするかな。何も考えてなかった……。
すると、さっきの男が近づいてきた。
「貴様！ この俺に恥をかかせやがって、いい気になるなよ！」
「はぁ？ なってねぇーよ。あんたみたいな男なんて気にもしてねぇ……」
「ちっ、くそっ……」
と、あからさまに悪態ついてきたようにも見えるのは俺だけだろうか？
なんで、高額の値で落とした俺がこんな嫌な思いをしなければならないんだ？
俺は誰とも会話せずにそのまま人ごみの中をステージの奥の方へとゆっくり歩き始めた。
周りからどんなことを思われているのだろうか。
そんなに俺は悪役に見えるのだろうか。
周囲の目が俺を軽蔑するような目で見てくるのは確かである。
俺はそんな気は無かったんだよ。
