130 真理の行き先Ⅲ
「ああ、奴ならトイレに行くとか言っていたぞ」
「珍しいよな。あの冷徹な男が侍女なしでこの訓練に参加するなんて……」
「だよな……」
「ってか、侍女の方は風邪なんだろ? あいつ一人で大丈夫なのか?」
「俺に言われても分からねぇーよ。天才は、一人で何でもできるだろう」
「そうだよな……。天才は俺達凡人とは、違う選手にいるからな……」
二人が話している近くに建物の陰に隠れていた少年が一人いた。
――――そうだったんですね。
――――あなたはいつも私がいないときは、一人でこんな陰口を聞いていたのですか……。
――――人というのはあまりにも悲しい生き物ですね。
エミリーは、深々と溜息をついた。
× × ×
「あーくそっ‼ 全く何も見つからねぇ‼」
ハウロックは、解読書を床に叩きつけて、地団太を踏みながらイライラしていた。
「こっちもだ。つまり、これは間違っていたことになるな」
デミトロフもまた、大の字で床に寝転がっていた。
「それにしてもなんで同じ方程式が魔法と錬金術に入り込んでやがるんだよ。デミトロフは、何か分かるか?」
「さぁーな。だが、それも少し引っかかる点はある」
「そうだよな。重ねてみたりしたら解ったりして……」
「それだぁああああああああ‼」
デミトロフは、いきなり声を張り上げる。
「うわぁ! い、いきなりどうした……」
「おい、同じ方程式と同じ言葉を重ねろ。もしかすると、始めは錬金術で構成されている可能性が高い」
「はぁ?」
「つまりは錬金術の中に魔法があり、魔法の中に錬金術があるって事だ」
「錬金脳の考え方は分からん。もっと分かりやすく教えてくれ」
ハウロックは、頭を悩ませて、デミトロフに訊く。
「つまりはコップの中に水があるとするだろ? コップが錬金術で、水が魔法だ。無図がこぼれ落ちると、コップの中には何も残らない。そして、ふたたびコップの中に水を入れると、何かが浮かび上がってくる。まぁ、そんな感じだ」