128 真理の行き先Ⅰ
闇の集団の襲撃まで二日————
それぞれが自分のやるべきことを成し遂げるために自分の仕事をしていた。
「ハウロック、貴様はなぜ、魔法を覚えようとした?」
「今ここで訊く話か?」
ハウロックはノーマンの本の魔法の部分を解読しながら、デミトロフを見た。
「そうだな。簡単にまとめるならカッコイイからだ」
「単純だな」
「おいおい。単純こそ、時には納得のいく理由にもなるんだぞ。だったらお前はどうなんだ? 錬金術は面倒だろ?」
「俺か? 俺ねぇ……」
デミトロフは、作業の手を止め、自分のいれたコーヒーを飲みながら天井を見上げた。
「錬金術の奥深くを知りたかった。それに尽きるな」
「奥深くねぇ……」
ハウロックはページをめくりながら、紙にペンを走らせる。
「そもそもこの解読書、少しおかしくはないか?」
「そうだな。いくら考えても錬金術の解読法で繰り返し解いているが、全く解ける気がしない。所々、魔法と重なりあったり、余計なものが混じって全く分からん。これを書いた奴は、一体どんな奴だったんだ? 面倒なものを残しおって……」
デミトロフは、苛々しながら本を投げ捨てる。
「確かにこれは普通の解読では無理な箇所が多すぎる。そもそもそれを単純に解こうとするから駄目じゃないのか?」
「なぜそう思う?」
デミトロフはハウロックの疑問に耳を傾ける。
「だってそうだろ? 俺とお前が一睡もしないで解読しようと思っていたのにそれ自体がまるっきりダメだった。と、言うよりもこのままでは絶対に解くことは出来ない」
「はっきり言うな……」
「そうでもないとスッキリしないだろ?」
「確かに……」
「そこで、他に何か違った方法を考えてみるのはどうだ?」
「違う方法だと?」
ハウロックの案にデミトロフは首を傾げる。