126 双方の遺言Ⅳ
デミトロフはハウロックの手を退けて、本の中身を見る。
「はぁ……。これは面倒な暗号文を作ったものだな。世界各国の言葉や錬金術の解読法など色々と混じってやがる」
「ほうほう……これは面白そうなことが載っているな。魔法に関する解読法が何千、何万通りもあるな。これは三日間の間で終わるかも本当に怪しくなってきたな」
「そうですか……」
エミリーは、そう言われると少しの間考える。
「分かりました。私にいい考えがあります」
「何か案でもあるのか?」
「はい。ですが、その代わり、その本の解読を三日間、不眠不休でやってもらえますでしょうか? やってもらえますのなら私が何とかしましょう」
エミリーの瞳の奥に何かが燃え始めた。
「俺を誰だと思っている。やれることならやってやる」
「まぁ、俺もここで死ぬのだけは勘弁だからな。今回はフル回転で頭を使うか。じゃあ、俺はさっそく必要な物を取ってくる。後は二人でよろしくな」
そう言い残して、ハウロックは本を探しにどこかへ消えていった。
「エミリー、この三日間でお前はどうするつもりだ?」
「言ったでしょ。私の十八番を使うつもりです」
「だろうと思ったよ。出来るならやり過ぎずにいてくれよな」
「分かりました。明日から私は、あなたのそばから離れますが、きちんとしておいてくださいよ。今夜までですからね、あなたのお世話をするのは……」
「分かった。でも、くれぐれも気を付けてくれよ。お前は錬金術が使えないんだからな」
「分かっておりますよ。それなら少しズルですが、いつものアレを貸してもらえますか?」
「分かった。準備してあるから明日、行く前に俺が渡そう」
「ありがとうございます」
エミリーは、デミトロフに礼を言う。
「言っておくが、お前の体に負担がかかるのは確かだからな。あまり使用するのは進めんぞ」
「それくらい頭の中に入っていますよ。回数は出来るだけ抑えますから……」
二人はそれから錬金術、魔法に関する情報が載ってある本を探し、それを部屋へと持ち帰った。
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合同演習・二日目————