124 双方の遺言
「まあな、面白い話を聞いた。ノーなんちゃらだっけ? その人が書いた本を探すんだろ?」
「ノーマン・オリファンだ。四十年前に在籍していたと言われてある本当かどうかわからない幻の人物だ」
デミトロフ達もエミリーの後ろを歩く。
「ノーマン・オリファンは、その昔、魔法と錬金術を同時に使い分けることができる人物だったらしい。そもそもそんなことができる人間自体、空想上の理論だけどな」
「空想上の理論か……。確かにそんな奴がいたら無敵ビックリ人間だな。将来、博物館に銅像を建てられてもおかしくない」
「確かにそんなことが存在するのなら俺も魔法を覚えてみたいな」
「だったら、俺は錬金術だ」
二人はそれぞれ自分が持っていないものを欲しがる。
「魔法の知識があれば、錬金術と融合でき、新たな可能性を生み出すことができる。無を有に変え、有を無に変える。錬金術の等価交換が変わる可能性もある」
「なるほど、魔法はそんな法則を破っているような存在だからな」
錬金術は等価交換、魔法は逆を考えれば非等価交換。
第三図書館の中に入ると、大量の本がどっさりと本棚に並んであった。
ここには廃棄寸前の本や読まれなくなった本がたくさん集まっている。
「なんだよ。こんなにも多かったのか? ホコリ臭‼」
ハウロックは、鼻を押さえながら図書館内を歩く。
「この図書館ではおおよそ十万冊以上の本が置いてあります。古代文字から現代文字まで様々な分野まで広がっており、各国の本も多く置かれてあります。私達の目的は、その中でもたった一冊、ノーマン・オリファンの本です」
エミリーは、どんどん前へと歩いていく。
「貴重な一冊ですから紛失や盗難に遭われると困るだろうと、昔の私は自分が分かるようにそれをどうやらこの図書館内に隠したようです」
エミリーは、自分の手帳を読み上げる。
「それで、お前は一体どこに隠したんだ? そこにあるんだろうな?」
「心配しないでください。地図とメモに記載されている通りに進むとありますよ。なにせ、ここはあまり、人の出入りが少ない所ですからね。来るとするならあなた見たいくらいな人でしょうか?」
「それは俺が錬金術バカだとでも言いたいのか?」
「はい」
「即答かよ」
デミトロフは、溜息を漏らす。