123 双方の遺言Ⅰ
翌日――――
デミトロフとエミリーは、第三図書館を訪れていた。
「質問いいだろうか?」
デミトロフは、右手をエミリーに問う。
「何でしょう?」
「俺の勘違いだったら教えてくれ」
「はい」
「俺の隣にいるのは幻だろうか?」
「そうですね。あなたがそういうのならそうなんでしょう」
デミトロフは、右隣にいる人物を指す。
「第二の質問。そいつは俺の見たことのある奴と似ているんだが、どこかで見たことがあるか?」
「そうですね。あなたが見たことがあるのならあるのでしょう」
「第三の質問。そいつは現在、物凄く面白そうにニヤニヤしているんだが……」
「気のせいですよ」
「最後に……どうして貴様がここにいるんだぁあああああああああああ‼」
デミトロフは、大声を上げて、隣に平然といるハウロックに言った。
今日は、エミリーに頼んで色々と理由を付け加えて訓練を休んでいる。
だが、そこにイレギュラーが発生したのだ。
それがハウロックである。
なぜ、こんな所にハウロックがいるのか分からない。
「なぜって、俺はそこにいるお前の侍女に呼ばれたんだよ」
ハウロックは答える。
「エミリィイイイイイイ?」
デミトロフは、エミリーを睨みつける。
「仕方ないですよ。これは錬金術と魔法なんですから、あなただけで解読できる保証はないですよ」
「ぐっ……」
デミトロフは返す言葉が無い。
「じゃあ、行きましょうか。誰かに気づかれると厄介ですしね」
エミリーはさっさと図書館の中へと歩いていく。
「お前、あいつからほとんどの内容は聞いたのか?」