119 二人のバラガキⅥ
デミトロフは、頭を悩ませながら寮に戻った。
寮に戻ったデミトロフとエミリーは、自分たちの部屋に戻った。
「エミリー、お前はどう思う? この学園に何かあると思うか?」
「そうですね。私が知る限りではないと思われます」
「どうしてそう言い切れる?」
「この学園には魔法と錬金術、その二つが揃っています。ですが、そのような学校は他にもありますし、そもそもこの学校の秘密があるとするならば、誰かが今頃暴いているでしょう」
「それもそうだな」
エミリーの意見にデミトロフは耳を傾ける。
「以前、私も個人的にですが色々と調べておりました」
「調べていた?」
「はい。一応、私の手帳のどこかに書いておいたはずです」
エミリーは制服の上着を脱ぎ、ワイシャツとスカートの状態でエプロンを着て、掃除機を持つ。
スイッチを入れ、部屋の床の掃除を始める。
「その手帳はどこに置いてあるんだ?」
デミトロフは掃除しているエミリーに訊く。
「隣の部屋の倉庫に置いてありますよ。こっちに引っ越してくる時に私の物は全て持ってきましたから……」
「隣の部屋って、ほぼ物置じゃないか。まあ、整理してあることは整理してるけどな」
「私が掃除している間に調べておいてください。と、いうよりもここにいられると邪魔なだけなんですけどね」
エミリーは、デミトロフを睨みつける。
「はいはい、すぐに行けばいいんだろ? どれくらいで掃除は終わるんだ?」
「三十分から一時間くらいですよ」
「分かった。終わったら呼んでくれ。まぁ、その時は温かいコーヒーでも入れておいてくれよ」
デミトロフは隣の倉庫の扉を開け、中に入った後、扉を再び閉めた。
「コーヒーですか……。今夜は徹夜になりそうですね」
エミリーは呆れて、深々と溜息を漏らした。
――――そういえば、昔、誰かが大図書館内に何か隠したという話を聞いたことがあったような、無かったような……。
――――確か、結構有名な錬金術師だったはずなんですけど……。
――――ま、浮かび上がった時に調べればいいでしょう。