112 氷の女王XV
二人の銀弾が同時に宙を舞う。
すれすれのすれ違いをし、お互いに目掛けて、飛んでいく。
ビシッ‼
スコープに着弾し、体全体に赤色のペイントが飛び散る。
視界が霞んでどうなったのか状況が分からない。
「そこまで‼」
二人の間に氷の壁が立ちすくむ。
そして、氷の壁を歩いてくる一人の男が現れた。
「お前は……」
デミトロフは、その人物を見る。
ハウロックだ。
「どちらとも戦闘不能だ。顔に被弾を浴びている」
ハウロックは双方の顔を見て、勝手に判定を下す。
「まだ終わってない!」
「いいや、終わりだ。お前の顔と、そこの女の顔もどちらとも死んでいる。つまりは引き分けだ」
ハウロックがそう言うと、戦いは終焉を迎えた。
デミトロフは控室に戻ると、銃を壁に叩きつけ床に座る。
――――くそ‼
――――引き分けか……。勝ったと思ったんだけどな。
デミトロフは、タオルで汗をぬぐって、疲れがゾッと出てくる。
集中が途切れ、緊張感もなくなった自分の体が重たく感じる。
手が震え、握力が全く感じない。
「終わりか……」
天井を見上げると、真っ白な点状が見えた。
エミリーもまた、控室に戻ると、武器を床に置き、近くに置いてあったソファーの上に寝そべった。
――――今回は私の負けですね……。
――――まさか、狙撃で引き分けになるとは思いませんでした。
――――それに初めて連勝をストップされましたしね。
エミリーは、悔しそうな顔をしながら目をつぶった。