103 氷の女王Ⅵ
「おい、ハウロック。お前がこんな奴の戦いを観戦に来るとはな。氷結の秀才が何の吹き回しだ?」
ハウロックと同じ魔法科の男子生徒が声をかけてきた。
「ああ。面白いから見に来ただけだ。まぁ、賭け事はそのついでだ。それよりもお前はこの戦いをどう思う?」
「そうだな。戦いも中盤。体力的には男があると言うが、どちらともほぼ互角。まあ、ここからは運次第じゃないのか?」
「本当にそう思うか?」
ハウロックは、確証があるかのような言い方をする。
「はぁ? お前、どちらが勝つか分かっているのかよ!」
「ああ、そう言ったつもりだが?」
「じゃあ、どっちが勝つって言うんだよ!」
「それは……」
ハウロックはコインを見せ、フッと笑った。
「おいおい……マジで言っているのかよ……」
男子生徒は、ハウロックが出した答えを見て言葉を失った。
エミリーは建物を伝ってデミトロフを探していた。
「ここまで姿を隠しているということは、罠を張っているかもしれませんね」
エミリー、双眼鏡を使って、周囲を確認した。
――――つまりは地上を移動しているって事ですか。
――――私と狙撃戦に持ち込むというわけですね。
もし、時計塔から狙われるとするならば、角度が四十五度の位置。つまりは相手から見える場所で構えるしかありませんね。
エミリーは建物の屋上を軽々と、飛び越えながら狙撃ポイントに向かう。
時刻は開始して三十分が過ぎていた。
観客席は少しずつ静まり返る。
最初の激闘が凄すぎて、ほとんどの人が飽きてきたのだ。
だが、一部の生徒は真剣に二人の動きを観戦している。
――――弾は十分にある。でも、狙撃は一発勝負。
――――やるしかないわね。
エミリーは、建物の屋上を草原のように飛び越えながら走り回る。
――――やはり、狙撃戦に持ち込まれたか……。




