1-9 スードの街4
男に爆裂を仕掛けた。
とたんにアルが飛んで来て術を押さえ込んだので、男は片腕しか爆発しなかった。
「ニャー(オレが止めなかったらどうなっていたか、わかるな)」
みんな爆発前の異常な魔力の高ぶりを感じたらしく、真っ青になっていた。
片腕になった男は泡を吹いて倒れていた。
が、アルの治療魔法で、腕はなんとか戻ったようだ。
「ニャー(お嬢様は悪くありません。 どうかお気になさらず)」
当然だ。
そのうち冒険者カードができたらしく、私たちは冒険者ギルドを後にした。
「ニャー(そろそろこの街を発ちましょうか?)」
「もうでていくのか?」
「ニャー(世界は広いのです)」
私たちは駅馬車に揺られていた。
ガルムの街までの定期便である。
初めての馬車にわくわくしていたが、すぐにお尻が痛くなって閉口した。
アルがクッションを出してくれてなんとかなったが、もっと早く出せと言いたい。
振動でうつらうつらしていたら、急ブレーキに起こされた。
止まったままで外が騒がしいので、アルと降りて見に行った。
護衛たちがモンスターと戦っていた。
アルはホッとしているようだったが、どこにホッとする要素があるのだろう?
むしろワクワクもんじゃないでしょうか?
念のためアルにやっつけてもいいか目で聞くと、首を横に振られた。
ああ、目立ったら旅の邪魔をされるんでしたね。
欲求不満をかかえて馬車に戻った。
不機嫌な私にアルは言った。
「ニャー(探知を広げて、遠くのモンスターならやっつけてもいいですよ)」
護衛たちは無事にモンスターを倒せたらしく、駅馬車は再び動き始めた。
それからは窓にかじりつき、見えないほど遠くのモンスターを感知しては爆散させた。
途中でモンスターの大きな集団を見つけて、ファイアストーム(火災旋風)を連発して、根こそぎ燃やし尽くせたので、私の機嫌はなおった。
にこにこしていたら、馬車に同乗しているおばあさんがなにかくれた。
「ニャー(どうもありがとうございます)」
アルはお礼を言っているが、これは例の毒リンゴですよ?
アルに目で尋ねると、「ニャー(甘くておいしいですよ)」 と。
まあ私たちに毒はほとんど効かないからいいんだけどね。
仕方なしになめると、とても甘い!
これは! うまいぞ!
そうか、あのときアルは、うまくて泣いていたのか。




