5-5 イーブ温泉2
魔物は湯船の中にいた。
体が温泉のスライムというか、透明ローションでできた海坊主というか。
ひと目で物理攻撃が効かず、炎攻撃も効かないだろうことがわかる魔物だった。
「なんじゃ、おまえは? ばくれつ!」
「ニャー(あっ、お嬢様、たぶんそいつにそれは悪手)」
スライムは爆散したが、多量のミニサイズに分裂しただけで、それぞれうにうに動いて、生きていた。
お嬢様の尻拭いは自分の仕事、全パーツを意識して闇空間に放り込み、
ひとつにまとめた後 水分を奪って乾燥させ、
残りかすを焼却して灰を風に捨てた。
「ニャー(おそらく地下の源泉から紛れ込んだ魔物でしょう。 見かけだけで大したことなくて幸いでした。 みなさま、お体が冷えないうちに湯船へどうぞ)」
「アル、しゃんぷーはっと なのじゃ。」
「ニャー(ブルーとピンクがございます)」
「ピンク なのじゃ。」
「ニャー(かしこまりました)」
お嬢様の頭を丁寧に洗う。
「ニャー(どこかかゆいところはございませんか?)」
「せなか なのじゃ。」
「いやあぁぁ! アルさん! ベアトリス様をお洗いするのは私ですぅ!」
「いやいやいや、ふたりとも! アル様は男性ですよ?」
「ニャー(自分は猫ですので、どうぞお気になさらず)」
「パカー(プンプン)」
「ニャー(え? いやいや、ルカさんはいつもと同じお姿ですよね)」
「パカー!!」
ルカの後ろ足で、蹴っとばされて飛んで行った。
大地に落ちたところを、ドロシーにぐるぐる巻きにされた。
さらに逆さ吊りにされたところを、メリーアンさまが枝でつんつんしている。
「ん? アルは みのむしごっこ か?」
「ニャー(お嬢様、耳の後ろも洗ってくださいね)」
さらにドロシーに、お湯をぶっかけられた。
「ニャー(あはは、平和ですねえ。 平和が一番です)」
「アル様? 痴漢して罰を受けているのに、どこが平和なんです?」
「ニャー(だってこれくらい温泉回では定番です。 誰も死なないのは、それは平和なのです。 みんなで平和を享受しましょう)」




