4-8 ユーグラシル国境 (※イラストあり)
エルフの国ユーグラシルとの国境戦線で、魔族軍第3軍の将軍カトリーヌは、目を輝かせた。
魔王になれるチャンスがやってきた。
そもそもがカトリーヌも王族、第二王女なのだ。
私を差し置いて、兄や妹が何を好き勝手やっているのか。
ここは部下にまかせ、すぐにでも魔王城に行き、仮魔王の地位を奪おう。
いや待て。 その後の魔王の儀で、ゴーガやグルガーに勝たねばならぬ。
この二人に勝てる算段を見つけてからだ。
止めは本人が刺さねばならないが、それまでは部下が戦ってもいいはずだ。
(※勇者パーティの魔王討伐参照)
ま、まあ女子供だから、腹心一人なら大目に見てもらえるだろう。
となると強力な部下がひとり欲しい。
妹の第7軍将軍のシャーロットにしようか。
彼女は戦闘力は高くないが、精霊魔法に長けているので、支援に向いているはずだ。
同じ王族で妹なので、仲間にも引き込みやすいし。
ではまず仮魔王になって、すぐにシャーロットを部下に引き込もう。
すぐにユーグラシルに使者を出せ。 一時停戦だ。
魔王城。
「ベアトリス、いるか?」
「ニャー(これはこれはカトリーヌ様、いらっしゃいませ)」
「だれじゃ?」
「ニャー(お嬢様、こちらは元第二王女で、現在魔族軍第3軍の将軍を務めていらっしゃいますカトリーヌ様です。 お嬢様のお姉さまです)」
「カトリーヌおねえさま? まおうになったベアトリスなのじゃ。 こんにちは?」
「なぜ疑問系? いや、そんなことはどうでもよい、仮魔王の地位を私に寄越すがいい。」
「かりまおうとは なんなのじゃ?」
「ニャー(あ、第二王子が正当な継承と認められないから、それを世襲しても正当な魔王と認められない、ですか。 魔族世間はそういう認識なのですね)」
「ニャー(しかしカトリーヌ様、王族であるあなたなら、ベアトリス様の頭上の次期魔王の冠の意味がおわかりになられるはず)」
「! 次期魔王の冠だと?」
「あっ!」
「だ、だれからもらった?」
「ニャー(ヴィクトリア様です。 白亜の塔でいただきました)」
「そ、そうか・・・」
解説しよう。 次期魔王の冠は、前魔王の遺志、それに背くことは、前魔王に背くこととなるのだ。
「わかった。 それは正式な魔王の証だ。 シャーロットにも話してこよう。」
「これから私とシャーロットはベアトリスに付こう。 ただし魔族世間はそれでは納得しないだろう。」
「魔王の儀は、滞りなく行われるだろう。」




