1-5 魔の森2
お昼はローストビーフの入った和風パスタ、お嬢様の好物だ。
動き回ったせいか、おかわりまで平らげた。
「ここはキレイなところじゃな。 そとのせかいはいいのう。」
泉から涼しい風が吹いてきて、お嬢様の目がトロンとしてきた。
お昼寝の時間だな。
天蓋つきのベッドを用意すると、お嬢様はすぐにコテンと横になった。
すぐさま服がしわにならないように着替えさせる。
本人が気付かないくらいに一瞬で。
魔法の世界だし、自分は執事だし、そもそも猫だから、何の問題もないですよ?
服を魔法でクリーニングしながら近づいてくる気配を探る。
魔族の軍隊か。
お嬢様の無双っぷりで気付かれたか?
だがやつらの力量は低い。
ダミーでベヒモスでも出しておけば、こちらには気が付かないだろう。
さっそくベヒモスを召喚し、同時にお嬢様と一緒にベッドごと転移した。
森の出口の草原の岩陰でしばしの休憩。
見えないが近くに街道があるようだ。
使い魔をやって双方の道の先を調べておこう。
サインを感じて、道の右にやった黒い小鳥の使い魔と、視覚共有する。
確かに街だ。 お嬢様は街に行きたがるだろうか。
もし行くならこのままではまずいな。 猫獣人にでも変装するか。
山を越えての国境越えという手もあるが、きっとお嬢様は楽なほうを選ぶはずだ。
道の左も別の街へと続いていたが魔王城に近づくので却下する。
役目を終えた使い魔たちは、影に潜って帰った。
オレは猫獣人に変装し、執事服を身にまとった。
目覚めたお嬢様を驚かせないように気をつけねば。
「アル?」
「ニャー(ここに)」
「のどがかわいたのじゃ。」
半分寝ぼけたお嬢様に甘い水の入ったマグを持たせる。
んぐんぐ。
「あれ? アルがでっかくなっておるのじゃ。」
「ニャー(近くに街があるようです。 行ってみますか?)」
「もちろんなのじゃ。」
素早く着替えさせ、ベッドを片付け、ふたりで街の近くまで転移した。
使い魔で視覚共有していたから跳べるのだ。