2-16 オーミの街
オーミの街は栄えていた。
ダンジョンの宝石のおかげだろう。
街中は冒険者たちでいっぱいだった。
人が多い分不心得者も多いが、オレとドロシーがいる限りお嬢様たちへは指一本触れさせない。
屋台行脚をしておなかが膨れた後、お嬢様はいろんなお店に興味を持ち始めた。
「あそこにいけば、けんがもらえるようじゃ。」
「ニャー(いいえお嬢様、剣を金貨や宝石と交換するところでございます)」
「そうじゃったのか。 じゃあまあ、けんはつかわぬからよいか。」
「ニャー(さすがお嬢様です)」
しかしお嬢様はどんどん魔族の気配に近づいていく。
もちろん偶然だろうけど早くなんとかしなければ。
「ニャー(お嬢様、あちらに綺麗なお洋服のお店がありますよ?)」
「ふくならアルがもっておる。 ほうせきがへるのはいやじゃ。」
「ベアトリス様、私が似合うお洋服を選んでプレゼント致しますわ。 ぜひ一緒に行ってくださいな。」
「それならまあ、いってみるのじゃ。」
クランベール様、グッジョブ。
入り口から見本の服が見える仕立て屋のお店に入った。
お嬢様のお召し物は基本、黒か赤なので、色とりどりの洋服に目をくるくるさせている。
クランベール様が着替えも手伝ってくれるようなので、店内で突っ立っていたら邪魔になるので、ドロシーに金貨を預け、店の外で待つことにする。
もちろん離れていてもお嬢様への悪意は、完全にガードしている。
街の魔族にも動きはない。
そうだ、ドロシーにお嬢様の下着の購入を頼んでおこう。
執事なので洗濯はするが、購入のハードルは高いのだ。
ん? お嬢様の魔力が乱れた?
『(ニャー(どうされました?))』
『(クランベールがわれをはだかにして、あちこちさわりまくるのじゃ!)』
『(ニャー(ああ、それはおそらくお洋服のために寸法を測っているのだと思います))』
『(たしかにそうきいたが、くすぐったいのじゃ!)』
『(ニャー(綺麗なお洋服のためですので、少しだけ我慢をお願いします))』
! いかん、今の魔力の乱れで魔族にここが気付かれてしまったようだ。
こちらに近づいてくる?
「ニャー(ドロシーさん、すみません、小用ができました。 少しの間ここをお願いします)」
「わかりました、アル様。 お気をつけて。」
さて、鬼が出るか蛇が出るか。




