1-3 落城 (※イラストあり)
ベアトリス様を着替えさせていたら、階下のほうが騒がしくなってきた。
もうここまで来たのか。
そういえば魔族の有力将軍たちは戦場にいる。
戦争中にお城に篭っているのは、魔王様と城兵くらいか。
しかしよく魔法障壁を突破して入ってこれたな。
ああ、これはあれか、第二王子たちが手引きしたのか。
人族の手を借りて魔王を継いでも、魔族たちが従うわけがなかろうに。
しかしそうすると従わない王族は根絶やしか。
人族なら恐るるに足りないが、魔族の王軍に数で攻められると分が悪い。
従うふりをすれば身は安全だろうが、ベアトリス様に頭を下げさせるわけにはいかない。
ここは逃げだな。
「ニャー(お嬢様、魔王城は第二王子の裏切りで落ちるようです)」
ここで逃げようと言ってはいけない。
お嬢様の性格上、逃げようと言って従うわけがない。
「ニャー(お城の再建が終わるまで、私と一緒に世界を旅して遊びませんか?)」
「おしろのそとにでてもいいのか?」
「ニャー(今回は特別です)」
お嬢様が奇声をあげて喜びの舞を踊っている間に旅の用意を整えて。
「ニャー(それでは行きましょうか)」
「もういくのか?」
「ニャー(善は急げ ということわざがあります。 いいことは早いほうがいいんです)」
アルはベアトリスを連れて瞬間移動で城の地下の脱出通路に跳んだ。
そこからまた出口まで跳び、もう一度城が見える森まで跳んだ。
ここからならいけるかな。
部屋に死体のダミーを置いておかねば追いかけられたら大変だ。
そして燃やされやすいように罠を仕掛ける。
魔王様は無事だろうか。
お嬢様の姉妹たちにはそれぞれ優秀な執事がいるから大丈夫だろうけど。
魔王城に火がついた。
もう振り返ってはいけない。
「ニャー(お嬢様、行きたいところはございますか?)」
「ぜんぶなのじゃ。」
「ニャー(では全部行きましょう)」
2人の逃避行が始まった。