2-5 フローリー草原4
クランベールは執事2人の模擬戦を熱い目で見守っていた。
が、ベアトリスは冷たい目で見ていた。
主人を置いて何を遊んでおるのじゃ。
落とし穴を作って2人とも落として埋めてやろうか。 けけけ
ん? ちょっと遠いが魔物がいるのう。
丁度良い、2人に向かって誘導してやれ。
しばらくすると普段森から出ることはないというフォレストベアーが、草原奥の森から2人のもとへ突進してきた。
「なっ!?」
「ニャ?(む?)」
いきなりのことに硬直したドロシーはほおっておいて、アルは振り向きざまその首を狩った。
「ニャー(邪魔が入りましたね。 今日はこれくらいにしましょう)」
「え? いや、フォレストベアーを一刀で?」
その気になればドロシーにもそれくらいはできるのだが、今は模擬戦に集中していたので、それ以外に気を配る余裕がなかった。
ということは、この猫の執事さんは余裕を持って戦っていたということ。
かなう相手ではない。 ドロシーは素直に負けを認めた。
「修行が足りませんでした。 アルフレッド様でしたね。 私の負けです。 私はドロシーと言います。 ドロシーと敬称をつけずお呼びください。」
「ニャー(そういうわけにはまいりません。 ドロシーさん、お嬢様たちが退屈しておられます。 旅に戻りましょう)」
「はい、アルフレッド様。」
「ニャー(私のことはアルでいいですよ)」
「ではアル様。」
『(ニャー(なにかへんな事になってしまいました))』
『(そんなことよりばしゃにまたクッションをつけるのじゃ。 おしりがいたいのじゃ。)』
馬車に手を加えて、旅を続けることにした。
アルとドロシーが交代で御者をし、空いた一人が馬車内で2人のお世話をした。
ドロシーは性能の良い収納袋を持っており、料理の腕もよく、有能な執事だった。
不可侵条約も解消され、非常に効率的で快適な旅となった。
「次のキサラの街からは3方向に道が続いています。 どちらに向かわれますか?」
「ニャー(建前とはいえ、レベル上げの旅ですからね、ダンジョンのあるほうへ行きたいのですが)」
「王都以外のダンジョンとなると、オーミの土のダンジョンが近いですね。」
「ニャー(ではそちらを目指しましょう)」
ひとまずはキサラの街へ。




