2-1 ラズベール領主館
馬車は草原から街道に出ようとしていた。
ん? フローレの街のほうに向かっておるのう。
あ、王都とはフローレのことじゃったか。 近くじゃん。 旅にならぬ。 なんじゃ。
およ? 門の列に並ばなくてよいのか?
こっちにも入り口があったのか。 こっちはすいておるのう。
ラズベール男爵とアルが、門番に盗賊の報告をしている。
しかし貴族なので引き止められることもなく、すんなり通してくれた。
簡単に入れたではないか。 アルめ、毎回地下など潜らせおって。
ははーん、アルはこっちの入り口を知らなかったのじゃな。 仕方のないやつじゃ。
やがて馬車は貴族街のこじんまりとした領館に着いた。
「ここが私たちの王都の家ですわ。」
「われらはまちのやどにとまっておる。 ではここでおわかれじゃな。」
「そんな、もっとベアトリス様とおはなししたいです。」
「ニャー(いいえ、我々は他国のものですので、もうここで)」
「だからこそ、きちんとお礼をさせてください。 ささ、どうぞ入ってください。」
アルと私は逃げるわけにもいかず、館に入ることになった。
応接の間に案内されたアルと私は、呼ばれるまでここで待つらしい。
私は座っているのだが、アルはウロウロしている。 行儀の悪い。
「ニャー(監視の魔法も魔導具もないようです。 周りに人の気配もありません。 やっとお嬢様と話せます)」
「ネコリーヌってなんじゃ?」
「ニャー(騒ぎになるのを防ぐためです、お許しください。 仮の身分、ネコリーヌ公国のマオー男爵の娘でお願いします)」
「ニャー(普通有力な貴族の場合はあのようなことがあった場合、我々は疑われるはずなのです。 貴族に接触するために盗賊を使って襲わせてわざと助けに入ったのではないかと)」
マッチポンプか。
「ニャー(しかしこの貴族は身分も低く、裕福でもなく、政争にも無縁、だから罠ではないと考え、素直に我々に感謝しているようです)」
「ニャー(となると用心すべきは、逆に我々、つまりネコリーヌ公国と、貿易や政略結婚でつながりをもち、権力を手に入れようとされないかどうか、です)」
え?
「ニャー(つまり、我々を利用しようとするそぶりを見せたら、即撤退します)」
いや、もともとネコリーヌはないじゃろ? それにここまで待ったんだから、夕ご飯は食べて帰るのじゃ!




