1-2 ご主人様は のじゃ姫様
魔王城に攻め込んで来ている人族の勇者パーティとかいうやつをなぎ払っていたら、ご主人様が目を覚ましたのを感じた。
有能執事(自称)にはわかるのだ。
すぐさまご主人様の部屋へ瞬間移動。
洗顔タライやタオル、朝食などを用意する。
「なにやらさわがしいのじゃ。」
ご主人様は魔王様の数いる娘のひとりで、ベアトリス様、7歳。 魔族は寿命が長いので、この年では赤子や幼女扱い。 当然戦力外で、しかも何をしても許される身分。 性格が歪まないわけがない。
「ニャー(魔王城に人族が攻め入って来ております。 ですので今日は窓を開けて空気を入れ替えるのは控えさせてください)」
「ほうほう!」
ベアトリスの目がギラリと光り、おもむろにカーテンを引き、窓を開け放った。
「おおう、なるほど、むしどもがうじゃうじゃおるのじゃ。」
「ニャー(お嬢様、危険です、流れ魔法が来るやも知れません)」
「アルがふせぐからだいじょうぶなのじゃ。」
オレの名はアルフレッド、通称アル、ベアトリス様の専属執事。 猫型モンスターなので、蝶ネクタイだけしている。 有能執事(自称)で戦闘力が高い。 気付いたらこうなっていたので、どういう経緯で猫が魔王の娘の執事をしているのかさっぱり謎だ。
「あそこにファイアストーム(火災旋風)をうちこんでみたいのじゃ。」
「ニャー(どうかお止めください。 味方もおりますので)」
「じゃあメテオはどうじゃ?」
「ニャー(お城ごと吹き飛びます)」
そのとき窓に向かって流れ火炎弾が飛んで来た。
が、窓に届く前に花火のように砕け散った。
「おお、キレイじゃ! アル、もういちどじゃ!」
「ニャー(お嬢様、そんなことよりメイプルトーストが冷めてしまいますよ)」
「おお、それはいかんのじゃ。」
「ニャー(ほこりが入らないように窓は閉めますね)」
もぐもぐ。
ホットミルクは熱すぎないようにややぬるめ。
目玉焼きは半熟、だが流れ出してはいけない。
有能執事(自称)なので、ベアトリス様の好みは完全に把握している。
今日は先日入手した黒のゴスロリドレスをお召しになるに違いない。
髪飾りはこれ、靴はこれ。
お嬢様のおそばに控えながらも、すべて段取りよくご用意できるのが有能執事なのだ。、