9-1 イーブ温泉7
というようなことがあり、俺たちは ナグルドツク を後にした。
しばらく いつもの イーブ温泉で、羽を伸ばす予定。
ふぃ~~。
オレは卵を負ぶったまま、温泉に浸かっている。
卵は手ぬぐいを頭に載せて、満更でもないご様子。
「ニャー(これが本当の温泉卵。 なんつって)」
卵が暴れる。
「ニャー(悪かった、悪かった、ごめん、ごめん)」
さて、一通り見て回ったし、旅もここまでかな。
人族の国はまだだけど、人族の勇者は魔族の敵だし、人族も魔族を目の仇にしてるし、わざわざ行かなくていいかな。
温泉から上がったらお嬢様に相談してみるか。
「いー! やー! じゃー!」
「いやじゃ! いやじゃ! いやじゃー!!」
夕ご飯のときに 言うんじゃなかった。
今、オレの上半身右サイドは、お嬢様の口から発射された ご飯粒まみれである。
一部の人にはご褒美らしいが、そんな崇高な精神は持ち合わせていない。
チカ、頼む。
ユグドラシアに貰ったロボな小鳥が、嬉々としてご飯粒を啄ばむ。
「ニャー(お食事時に失礼しました。 つづきはまた後ほどに)」
チカが浴衣の中に潜り込み、ご飯粒と間違えてか オレの乳首をつつく。
つつくな。 つつくな。 つつくと思ってつつかんのかーい!
などと余所見をしていたら、怒ったお嬢様に おかずを取られた。
ああ、オレの カニ と エビフライ が。 お嬢様、ひでぇ。
まだだ。 まだ 酢牡蠣 がある。
子供は酸っぱいものを敬遠するのだ。 勝った。 何に?
しかし旅を続けるとなると、人族の国では 一騒動は必至。
そもそも正規の手段では入国もできないはず。
魔族どころか、獣人もエルフも差別しているからなあ、あそこは。
密入国するとして、いろいろ見て回ってたら、確実にスパイ扱い。
下手したら宣戦布告とも取られかねないかもしれないぞ。
人族の国はやめて、魔族の国の 国内旅行 でお茶を濁そうか。
あとで みんなで 相談しよう。 そうしよう。




