7-14 大樹ユグドラシア6
つぎに、あなたと この船のことを教えてください。
『私はこの船の中枢AIにより作られた、対人コミュニケート用 立体映像です。
ナビゲート用、アシスタント用、アミューズ用、様々なタイプがございます。
船内であれば、同時に100体以上、維持できます。
また、容姿や性格設定など、自由にカスタマイズできますので、ご希望があればお聞きいたします。』
いえ、このままでいいです。
『次にこの船は、移民用星間連絡船ユグドラシア号です。
この星の単位で約1万年前にこの星にやってきました。
その後、移民たちは世代交代がうまくいかず、繁栄の後、絶滅の危機を迎えました。
船の文明の利器を巡り、数の限界から、内紛が起こったのです。
そこでシップマスターは船を封印し、現地で生きる英断を下されました。
この星に適応せよ、と。
幸いこの星の魔素は母星の魔素に近く、ほとんどの人がすぐ魔法を使えるようになりました。
原地の人に対し、能力的には優位でしたが、それでも数には負けます。
船の結界を発動させて外敵を排除し、なんとか現在に至ります。
シップマスターが亡くなってからは、諸々の問題に、口は出せても手を出せず、困っています。
マスター不在につき、AIの独自采配の許可を母星に仰ごうとしているのですが、通信装置の不調で、連絡がとれないのです。
なので通信装置の修理をお願いしたい、というわけです。』
AIの独自采配は、先々が怖いからおすすめしたくないなあ。
ってか、星間連絡船って、古くないですか? 今は星間トンネルが普通ですよ。
まあ、それはともかく。 母星の名前を教えてもらっていいですか?
『はい、ヴァルサン星です。』
あー、はいはい、あそこの星の人は耳 とんがってましたね。
それでエルフの耳は とんがっているのかあ。 スポックさんはエルフだったのかあ。
でも今のお話で、今回の原因は おおよそ わかりました。
おそらく通信装置に不備はありません。
原因は母星、ヴァルサン星のほうです。
私の記憶が確かなら、ヴァルサン星は、
約5000年前に、消滅しました。




