6-20 ガルム王城3
「わん(みなさま このたびは どうも ありがとう ございました。 それでは ささやかですが どうぞ おめしあがり ください。)」
謁見の間で獣王様から褒美の金貨100枚をもらい、迎賓室で歓迎会は始まりました。
子供たちの食欲がすごいです。
お待たせしすぎましたでしょうか。
食後のお茶とデザートまで ペロリ です。
「ガオ(ときに皆様の中に病移師様がいらっしゃるとか。 どなたでしょうか)」
「わん(あ、そちらの ねこのかた、なのです)」
「ガオ(左様でしたか)」
バタン、バタン。
いきなり武装した兵たちが部屋になだれこんできました。
「わん(だいじん! これは なにごと なのです?!)」
「ガオ(猫以外を人質にとれ! 猫が病移師だ。 さて猫の人、その貴重なお力で、わが国にご協力いただきたい)」
話の途中で大臣と兵達が、みんなバタバタと倒れました。
またなにかが起こったのです?
またまたキンッキンッと、音もしています。
「ニャー(ごちそうになったので、命は勘弁してあげます。 それではみなさん、おいとましましょう。 ベル王女)」
「わん(はい)」
「ニャー(ここにいたら いつか殺されますよ。 我々と一緒に行きませんか?)」
ここにいたら いつか殺される。 そう聞いて、今まで考えないでいた事が、すべてパズルのようにピッタリ合わさりました。
側室であった母と私が急に重篤な病になったこと。 母は死に、私も死にかけたこと。
兄弟たちの私への態度。 おびえたような目。
家臣たちの私への態度。 恐れるような目。
私の周りで聞こえる不審な音。 気付けば足元に落ちているナイフ。
そして今回の私の恩人に対する狼藉。
私はもうこれ以上、ここにいるべきではない。 いてはいけない。 いたくない。
なので思わずこう答えました。
「わん(はい)」
すると次の瞬間、私たちは船馬車に乗って、バジス湖に浮かんでいました。
あれ? 今のは夢だったのです?
あ、違います。 私はドレスを着たままです。
それに子供たちの口の周りが、ホイップクリームまみれです。




