5-29 セモール村3
「まままま、魔王? 魔王様? 浅田まおうちゃんじゃなくて?」
なんか前にも聞いたような。
「ニャー(お忍びで遊びに来たのですが、手ひどい歓迎を受けまして。 そこでこの村を焼き払うにあたり、一言ご挨拶をと思いまして)」
「ややや、焼き払う? ななな、なんで?」
「ニャー(ゴミというか、クズというか、生かす価値などないでしょう、こいつらに)」
シュバババッ
「おお、お待ちください、魔王様、それは殺生です。 一寸の虫にも五分の魂、じゃなくって、わわ、私たちは出来る子なんです。 最初に魔王様だと言っていただければ、純粋でかわいい妖精を演じる事だってできるんです。 そうです、あなた方は女子高に行ったことがありますか? 女子高生は、外面を天使に演じていても、仲間しかいない女子高の中では、みんなこんな感じなんです。 夢を見すぎなんです、幻想を持ちすぎなんです。 外ではその期待に応えようと、頑張って一生懸命演じているんです。 唯一気を許せるこの村で、本音を出しただけで、焼き払うなんてひどいと思います。 どうか、どうかお、考え直しくださいませ~!」
妖精王は土下座した。
・・・・なるほど、ここは女子高か。
外から見たら天使の園に見えても、中は実は だらしないクズ女の巣窟吹き溜まり。(偏見です)
妖精の村も同じで、夢見て憧れるだけで、現実に来てはいけないところだったんだ。
だから簡単に来れない様に、あんなに幾重にも結界が張られていたんだ。
納得した。
「ニャー(妖精王様、納得しました。 我々は足を踏み入れてはならない秘密の花園に来てしまったのですね。 憧れだけで勝手に来てしまい、理想を押し付けていたとは、気がつきませんでした。 このことは誰にも言いませんので、これからも 『妖精』稼業 がんばってください)」
「あああ、ありがとうございます~!」
「ニャー(みなさん、帰りましょう。 転送)」
イーブ温泉 まで戻った。
今日はここでゆっくりしよう。
それから みんなで、これからの予定を考えよう。
疲れた。
あ、ジャック と ティンプル も連れてきてしまった。
まあいいか。
あれを見てしまったら、ポンコツの ティンプル も、かわいい妖精に見えないこともない。
ではみなさん、お風呂に入ってゆっくりしましょう。
え? もちろん私も御一緒しますが?
ええ、私にはお嬢様のお世話という重大な責務がございますから。
え? 私がどんどんポンコツになってきているのではないかと?
それは心外な。




