オープンカフェ
冷やされた朝の海岸線
小さなオープンカフェの
艶やかな黒いマグと
淵までみなぎるたっぷりのラテ
描かれた葉っぱの絵が
息を吹きかける度にゆれる
観光客の疎らな足並み
無邪気な笑い声と
まだ満ち足りない好奇心が
新鮮なまま通り過ぎれば
目の端によぎる憧憬
昨日の靴を履いた足を組む
海面を点滅する白い光は
美しく加工された
ポストカードのように夢みがちで
ラテの軽い泡は
うっすらと上唇をなぞり消えていく
掠めるのは焦燥より薄いから
余分に透けていく遠い朝
潮風は
水平線を行き渡らせて
木のベンチ
街路樹の椰子、珈琲の香り
まばたきは眩しさに反応するよりも
古びた壁に写真を貼りつけるように
低く雲の浮かぶ空に
定まらない視線を置いて
見つめ返すように認められたい
私もまたその景色として
平らかに眺められるように