好い人
序、みたいなやつです。
闇色の翼をもつ魔物は、音もなく枝へ降り立った。
ある人はそれを見て天使と言い、ある人は堕天使と言い。
表情などとは無縁な美しい顔。
男とも女ともとれる容姿は、それの妖しさを一層際立たせる。
それは、ある人間の子どもを見つめていた。
それの降り立った枝の木が植わっている家の子どもだった。
その子どももまた少し変わっていた。
ふっくらとした頬は青白く、常に無理のある笑顔をし、ベッドで横になるばかりであった。
その子どもがふと、木を見上げた。
全くの偶然だったが、はからずも子どもは侵入者と目が合ってしまった。
子どもの目は満月の様に大きくなった。
『危ないよ、降りてきなよ。』
子どもがそう言ったように見えた。
『天使さま』
とも。