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女神が創った7人の使徒  作者: 渡辺
4/4

初戦

ちょっと長いです。


「アンタらは本当に他の世界から来たのか??」

「あ、はい、・・・」


出発地点からおよそ1キロにも満たない距離に運よく煙が立ち上っているのを見つけて、小さな村にたどり着いた。

奇妙な恰好からか直ぐに村人にも発見された。

異世界から来たことを話してもいいものか少し悩んだが、今は右も左も分からない状態なので正直に話すことに決め、直ぐに村の村長と話すことができた。


村長に事情を話しているのだが客人すら珍しいのか噂を聞いた村人がどんどん周りに増えていった。

会話に対応してるのは、眼鏡をかけた青年だ。

他に異世界から来た人のことなど聞いたが、ここは閉鎖的な小さな村らしくほとんど有益なものは得られなかった。



「そこでこの機会にお願いがあるのですが、・・・」

「他の世界から来た者は様々な伝説が伝わっています」


「私たちとは比べものにならない力を持っている、と」


嫌な予感がする。



「そこで、魔物を退治をお願いしたいんです」

「今までは村の者で何とかしていたんですが、・・」

「もう6人も村の者がやられてしまって、私共ではどうにもできないのです」


まだ自己紹介すらまともにしていない仲間の顔を見るとなんともいえない顔をしてる。

それもそうだろう。




「少し、時間を貰えますか?」


「分かりました・・・」

「今日はもう日が暮れる私の家に泊まっていきなさい、明日の朝答えを聞きましょう」




村長の家で泊まれるようになったが家を言うより小屋のようだった。

この部屋の広さで7人は狭い。


「しっかし、どうするんだ?」

「魔物ってすっごいファンタジーよね」

「俺たちには関係ないことだろ」

「普通に死ぬかもしれないんだろ?」


何にも話は進まない。

俺よりも年上の方が多い話会いは、ほとんど子供同然である俺意見など求めてはいなかった。

今のところは断る路線の意見が多い。


だけど、―――。


「俺は、村の人が困っているならやっぱり助けるべきだと思う」


俺の発言で変な空気が流れた。



「・・・私たちまだ何にもこの世界の事分からないのに?」

「だってもう村人が6人も死んでるんだ」

「俺たちだって死ぬかもしれないじゃんか」

「でも、このままほっといたらまた死ぬ人が出て来る・・・」


ずっと平行線の言い合いが終わらない。


「いいんじゃないか?」


俺の言葉に反感しかなかったが、初めて肯定の意見が出た。


「ただし、そこまで言うならお前が先頭に立てよ」


俺と同い年の金髪の少年。

名前は確か、虎二。



「・・・・・分かった」


言い出しっぺの俺がリスクを背負うという状態になると、誰も何も言わなくなった。


「なら、その魔物を何とかする代わりに出来る限りの情報提供、あと当分ここでの生活をお願いしたらどうだろう」

「そうすればここに居る全員に関係が出て来るし、正当な条件になる」


眼鏡を掛けた男性、錦さんが話をまとめた。


「でも柚菜武器ないよ??」


小さな女の子・柚菜に与えられた武器は首から下げてある、学校などで使われている小さな白いホイッスル1つだけだった。

そういえば、武器らしい武器を持っているのは俺と虎二だけだ。



「私の武器も武器じゃないし、それも交渉してみよう」


錦さんは苦笑する。



「こんなんで大丈夫なのか?」


誰かがせせら笑うように呟くのが聞こえた。




異世界の初日はいろんな不安を抱かせながら固い床の上で寝た。

布団は2組しかなかったため、男性陣は床、女性は柚菜を含め2人だったので彼女達が使うことになった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


翌朝、朝ご飯を運んでくれていた村長に昨日の通りの結論を話した。


「ありがとうございます!」

「足りない武器の件もこちらで用意します」

「案内役としてマルクスに案内させましょう」


村長の後ろに立っていた村の少年はペコリと小さく頭を下げた。


「・・・・・よろしくお願いします」


村長は要求通りに武器を用意し、少しの食料も渡してくれた。




"頼みますよ"と後ろから村人の声を受けながら森の中に入っていく。

森の中と聞いたから、もっとゴツゴツした足場でジャングルみたいなものを想像してたがもう何十年もお決まりのコースなのか、人の道が出来上がって木の間から木漏れ日が森の中を明るく照らす。


道案内のマルクスは俺たちの先頭を歩いていく。

俺も彼の隣を歩いていた。

後ろには柚菜が楽しそうにはしゃぎ、虎二が歩き、かなり後ろに他の人のグループが出来ている。


「魔物ってどんなものなんだ?」

「大きいと聞いてます、僕は見た事ないです」

「そういえば、マルクスは何歳なんだ」

「15です」

「えっ、危ないなら子供を一人で案内させるか?」

「僕は捨て子だから、村の人はなんでもいいんです」

「・・・・・・・ごめん」

「別に気にしてないです」


あっという間に話すことが無くなってしまった。

魔物が現れる様子はないが、異世界に来てるという状態にどうもまだ緊張してしまう。






「ここら辺で村人が襲われたんです」


出発してから約40分ぐらい歩いただろうか、森の様子も最初と比べるとうっそうとして蒸し暑くなってきた。


なんだか登山をしているだけのように感じてきて、他のメンバーもリラックスしてきた様に会話をしてるのが聞こえる。


いっそこのまま何も起こらないのではないかと思えてきた。


その時。









「なんだこの感じ、」


突然嫌な感じがした。

心なしか辺りが暗くなり、空気に触れる肌がピリピリと痛い。


「みなさんヤツが来ました・・」


マルクスが後ずさりする。


今まで体感したことのない緊張が漂った。

戦った事がなくても自然と刀を構えさせる。




「嘘だろ・・・?」


誰かがつぶやいた言葉が響く。


ズン、、ズシン―――。


地面に重厚感のある足音を伝えながら向こうからやってきたのは二足歩行で見た目だけで3メートル越えの化け物だった。

全身コケのような緑の物が体全身を覆い、ゴリラのように筋肉質だった。

心臓がうるさく動く。


「なんだよコイツッ――!」




手汗で握る刀が滑り落ちそうになった。


『おいおい、落とさないでくれ』


誰かの低い声が聞こえた。


「え?誰??」

『前を向け、敵が動くぞ』


慌てて目線を前に向けると魔物は木の幹にもなる太い腕を振り下ろした。

地に響くような低い音が伝わる。

腕は地面に受けとめられ、その跡としっかりとかたどっていた。

今の衝撃で森から鳥がバサバサと飛び立つ音が聞こえた。


「きゃぁあぁ―――!!」


後ろから目の前の現実を信じられないと悲鳴が聞こえる。


「これ初めて剣を握る奴の相手じゃないぞっ・・・」

『やるしかないだろ』

「ていうか、お前何??どっから喋ってるんだよ」


周囲を見渡すが、誰も見当たらない。

魔物が俺に向かって腕を振り下ろした。

気を取られ反応が遅れて逃げられない。



『私を構えろっ―――』

「ぁああ、」


思わず嗚咽が漏れた。

足が地面をとらえきれず後ろに滑って、思わず右足を下に着いた。

刀を通して支える上腕筋にギリギリと限界まで負荷が圧し掛かる。

――――重い。

――――圧殺される。


「うぐっ、ぁ」


思った以上の衝撃で舌を噛み、鉄の味が広がる。

こんなの勝てっこない。

やっぱりみんなが反対するように来なければ良かったのかも知れない。

ふわっと軽くなり、新鮮な空気が一気に入ってきた。


『次が来る、しっかり構えろ』


目の前が若干チカチカしながらも刀を構えなおし腰を低くし、対ショックに備えた。






突然笛の音が聞こえた。


「卓海おにいちゃぁあーん」



衝撃を予想して構えていたが、なぜか相手は上へ飛んでいた。

まるで顎からアッパーを食らったかのようにきれいに真っすぐと上へ。



「すっごおーい!」


「ゆ、ずなちゃん・・?」


隣には最年少の女の子柚菜ちゃんが奇妙な先ほどとは変わった服装で立っていた。

この場には不釣り合いな恰好、目に余る色合い。


ピンクと白のコントラスト。

ふわふわのスカート。

女の子にしか似合わない可愛い恰好。

首には白いホイッスルが掛かっていた。


なんだろう、テレビの中で見たことがあるような・・・。


「じゃーん☆柚菜さんじょー」

「ね、柚菜プリキュアみたい??」


「えっ、今の柚菜ちゃんが?!」



魔物は完全に予期せぬ攻撃に動きが鈍っていた。

そこに目がけ颯爽と飛び込んだ黄色いシルエット。


「あぶないっ・・・!」


虎二は振り下ろされる腕よりももっと魔物の懐近く踏み込む。

そして上半身と下半身がねじり切れるような位置まで体を回転させ、両手の剣を一方向に平行に持ち一気に体重を剣に持っていく。

狙っているのはたぶん右腕。


恐ろしい体感である。

上から振り下ろされる速度と下から振り上げる速度で瞬間速度は音速を超えた。


「オラァぁあぁぁ――――」

魔物の右手首から肘までの前腕を切り上げた。


「グオォオオォオオオッ―――――――!!!」


耳が割れるような魔物の叫び声に思わず耳をふさいだ。



「すげぇ切れる、」


動脈が通っていたのであろう場所から一気に血液が噴水の如く音と高く吹き出し、ボツボツと雨の様に落ちてくる。


頭の先から不気味な雨を浴びた。


「っ、・・・」


手から切られた部分は地面にボテッと無気力に落ちてきた。

断面は綺麗にカットされ骨は勿論、太い血管は丸く肉眼で見えるほどだ。

赤黒い魔物の血液が切り落とされた丸い血管の先からとどめる事を知らない様に吹きこぼれ、地面を赤く汚していく。


「っ、」


生臭い香りが充満して、ろくに入っていない胃の袋を刺激する。

気持ち悪い。



「おい、さっさと止めを刺せっ・・はぁ、」


虎二は息を切らしながら直ぐに相手から距離を置き、左足を地面につけた。


『動きが鈍ってる今だ卓海』

「っ、・・・」


一体どこにを刺せというんだ。

動物だって殺した事ないのに、切ったらまた血液が――。


切り口のいまだに流れ落ちる血液と入りきらなくなった筋肉が断面からぶにぶにとあふれ出てきている。

それは綺麗なピンク色だった。


『卓海!』

「・・・・オエぇっ、―――ッ、」

その場で胃の中の物をぶちまけた。

既に分解された食べ物は原型をとどめていない。



「チッ」


虎二は盛大に舌打ちを鳴らすと、眉間にしわを寄せまた立ち上がった。

突然、暴走したのかのように地面に複数の魔法陣が次々に浮かび上がり、彼はその上避けるように走り去る。

次の瞬間、ベゴゴと地面が圧力が掛かったかのようにへこんでいった。


上を見上げるともう魔物の顔はどうやっても届かない距離にある。



「足から潰していくか、・・・」


彼は魔物の切り落とした右手と同じ側の太い右足に狙いを定めた。

しかし、がむしゃらに動き始め流石に予想できなかったか左足に捕まり後ろに飛ばされた。


骨がきしむような、嫌な音がした。

5メートルほど後ろに飛ばさゴロゴロと転がと草で露出していた腕の細かく切っていくように赤く細い線が出てきた。


「げほっ、――あ"ぁ折れた、・・・クソ」

虎二は右手に持っていた剣を手放し、左の胸部の辺りの服を鷲掴んだ。

魔物は左手で虎二を捕まえようと手を伸ばすが、すかさず地面に転がり逃げた。


苦しそうに呼吸を繰り返すが彼は動くのを止めずむしろ腕を切断出来たことで、積極的に切りに行く。





虎二が格闘すること約15分。


魔物は力なく横たわっていた。

右手、右足、左手の四肢の半分以上を失い、素人目から見ても生命維持に危険なほど血液を流しすぎた。


意識が薄くなっているのか、虎二が魔物の体に乗っても思ったほど抵抗はなかった。

体の左側、心臓がある部分に両手で一本剣を突きたてた。

ズルズルと体重に押され、潜っていく。


ヒクヒクと魔物の体は痙攣する。


「・・・はぁ、きっつい」


最終的に剣の刃が半分入っている所で手を放し、足で柄頭を踏むと一気に下に蹴った。

刃が完全に見えなくなり、柄も少しめり込んだ。


魔物から力が抜けのを確認すると両手で引き抜いた。


虎二は水たまりの中の様にビチャビチャと血の海を歩く。

俺は恐怖で体が震え無意識に後ずさりしていた。



ドロドロと滴り落ちる持ち手からどす黒く染まった剣。

大量に浴びた服は元の色が分からない。

目の周りに着いた血液を肩で拭いながら俺の前まで来た。


本当に俺と同じ年なのか信じられない。


ほとんど一人で戦い勝利した彼。

自分のことで精一杯、不甲斐ない状態の俺。



腰が抜けて座り込んでいた俺を虎二は冷たく見下ろして口を開いた。


「俺さ、お前みたいに身の丈も知らねぇで偽善を振りかぶってる馬鹿みるとイライラすんだよ」


「魔王倒して世界を救え、ここに俺がいる存在目的だから別に受け入れてるつもりだ」



「けど、お前とは無理だ」


「俺はお前とは別で行く」

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