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魔砲使い

 部屋を移して、二人は自己紹介をしてくれた。

 黒髪はユキ、茶髪はミツと言うらしい。

 多分ニックネームだと思う。

 二人が互いにそう呼ぶのは親友、みたいな感じがする。

 そういえば私に親友なんていたっけ?


「貴方たちの名前についてはわかった。さっきの魔法使いたちは何?」


 ロボットがあるのに、あんな魔法使いがいるなんておかしいじゃない。

 おかしいと言えば、私とミツが使ってた銃もおかしい。


「さっきのは文字通り魔法使い。彼らは魔砲マギ・キャノンが嫌いでね、排除しようとしてるんだ」


「魔砲……?」


 疑問を抱けば知識が、私に情報を流す。

 銃の引き金を引く事で、魔法使いが呪文を唱える代わりとなるシステム。


「あれ? もしかして、うまくデータ入力できてない?」


 不思議そうに呟いたユキに私は答える。


「疑問に思ったらわかるけど、私が理解できてないのよ」


 この世界の人間なら、わかるんだろうけどね。

 元々別の世界の私には全然理解できないことだ。

 銃で魔法を撃つなんて。


「魔砲ってのはね、弾の代わりに魔力の素を込めて撃つ銃だよ」


 ユキが語ったのは次のような事だった。

 魔力の素となる元素を発見して公表した人がいる事。

 それはある鉱石に大量に含まれているという事もわかって、この世界の人々がその鉱石を使って魔砲を作ったのだという。

 誰にでも魔法が使えるのは素敵な事だけど、魔法使いはそれを我慢できなかったらしい。

 自分たちは魔法が使える特別な人間だと思っていたからだという事で、敵視されている。


「……じゃあ追い払ってもまた来るんじゃない?」


 私の質問に二人は首を振った。


「大丈夫。もうすぐユウさんが村に戻って来るから」


「村? ここ村なの?」


「そう、ここは開拓の前線基地にもなっていた村さ」


 開拓、ねえ。

 パソコンらしき物はあるし、銃も光線銃みたいだからてっきりSFの世界だと思ったのに、変な話。

 しかも開拓基地になってたのが過去形なら、今はどうなってるの?

 流されてただ生きてきた、死ぬ前と違って疑問が次から次へと湧いてくる。

 きっとそれは私の常識が通じないからだと思う。


「なっていた、って今は?」


「うーん……今は開拓自体が止まっちゃってるからね。それも魔法使い絡みなんだけど」


 人間の活動圏は魔力の素が発見されるまで、人間の住む場所は限られていたとミツは言う。

 魔物が出るとかで、人間が立ち向かう事はできなかったんだけど、魔砲により人間は攻撃手段を得た。

 と、なると住む場所を広げるのは当然なわけなんだけど。

 それは私にもわかる理屈だ。

 魔法使い絡みでその開拓が止まったというのはどういう事なんだろう。


「別の街に開拓公社っていう政府が出資して作った会社があって、そこから支援を受けてたんだ。それがいつの間にか本部のある街が魔法使いたちに乗っ取られた、というかお偉いさんが操られたみたいでさ。それで開拓はストップして、各地で魔砲を使う開拓者が魔法使いに追われてるってわけ」


 なんとまあ大変なことだ。

 それは開拓も止まってしまうわけだよ。

 さっきの魔法使いは追手か何かなのね。


「だからユウさん。――この人は開拓者じゃなくて応援だったんだけど、ユウさんがいれば大丈夫。第一級魔砲免許持ってるんだから」


 もしかして、魔砲って免許制だったんだ。

 考えてみれば引き金引くだけで魔法撃てるんだからそうなるよね。

 じゃあ無免許の私が魔砲使ったのってよくないんじゃないの?


「二人は一級じゃないの?」


「免許持ってるのはミツだよ。俺は魔砲の整備資格しか持ってない」


「俺が持ってるのは二級なんだ。厳密に言うと、さっきの魔砲はユウさんのだから本当は違反なんだけどね」


 つまり、整備するのにも資格が必要で、免許によって使える銃って違うという事でいいのか。

 ユキが整備の資格持ってるってことはここが整備工場みたいなものだったのかな。

 この世界の仕組みについてはまだまだ分からないことだらけじゃない。


「それで、この私の身体は何なの?」


「そう言う君はもしかして、別の世界から来たんじゃないの?」


 私が自分の身体を指すとユキがそんな風に笑う。

 ユキとミツは私の見慣れた顔つき、日本人の顔だ。

 違和感も何もない。

 同じ世界から来てるの……?


「多分、そうだと思う」


「やっぱり。でも、何で俺たちみたいに身体ごとじゃないんだ? それは俺が拾った壊れたアンドロイドで、色々改造しながら修理したもの、なんだけど」


 アンドロイドとロボットって違うの?

 私には同じように思えるんだけど。

 その疑問は置いとくとしても、身体ごと来てない理由は私にとって明らかだった。

 理由はそれ一つしかない。


「応えは簡単。私は元の世界で死んでるの」


 身体が来れるわけない。

 きっと魂とか意識とか呼ばれる物だけが、このロボットの身体に入ったのね。

 だとすると死神だと思ってたあの声は何だったのかな。


「そいつはまた重い話だな」


「俺たちが元の世界に戻るヒントにならないかって思ったけど……」


 それは悪い事をしたと思う。

 でも、私には二人が羨ましい。

 きっと元の世界に、夢や希望や目標があるってことなんだから。

 私には今も昔も縁遠い物。


「それは、ごめんなさいね。でも未練なんてないしどうでもいい事よ」


 私にとってそれが真実だったが、二人は変な顔になってお互いの顔を見合わせた。

 何か目と目で会話して頷く二人が不思議でならない。

 私は何か変な事でも言ったのかな。


「あ、あははは……気にしないでください」


 何だか不自然な笑い方をするのね。

 よっぽど変な事を言ってしまったのね。

 私とあの二人のこの世界での認識は違うみたいだし気をつけないと。

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