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ジグザグ  作者: 千紫紅
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第7話 「これってお約束な展開ですか?」




取り敢えず、あたしの机や椅子は無事だった。

今のところ何も起きてはいない。

でも何も起こらないっていうのは有り得ない。


あんな目であたしを見ているのだから。


昨日より増した負の感情。

がらりと変わった教室の空気。

突き刺さる視線。


耳を傾けなくても聞こえよがし交わされる会話は届く。



「・・・・・・で、志月様に迫ったって」

「遊月様にも・・・・・」

「今日だって、志月様と一緒に登校・・・・」

「使用人の分際で・・・」

「――遊月様が困っていらっしゃると仰って・・・」



おい、おい、おーい!

黙って聞いていれば・・・なんですかーこの突拍子のない噂は。

どこから降って湧いてきたんですかー。

噂の当人吃驚なんですけど。


さっきからあたしが天宮兄弟の弱みを握って誘惑したとか、迫ったとか、財産目当てだとか・・・笑いそうだ。

いや堪えろ、あたし。今殺気立ったこの教室で笑ってみろ、八つ裂き決定だぞ。


己の腹筋を駆使して笑いを引っ込めたあたしは、どうしようかと考えて諦めた。この間3秒も無い。だってねぇ、あたしがなんて言ったって絶対に信じては貰えないし、

あたしに味方なんていないし・・・うぁ〜ロンリー・・・。



それより、バイトを探さなくては・・・!

求人雑誌に集まる視線は物珍しさからなのだろうか?視線が熱いぜコンチクショー。

あぁ自分の一挙一足がこんなにも視線を集めるとは。ページを捲ることさえやりにくい!


木嶋先生のSHRが終わり、授業が始まってからもクラスメイトの視線はあたしに釘付けだ。

黒板見ようよ!公式うつそうよ!!親御さんに「このテストの点数はなんザマスか!」とか怒られても知らないぞ!!!――というあたしの心の叫びは残念ながら届かないみたいだ。授業そっちのけのクラスメイトを全く気にせずに分かり易く丁寧に、公式の解説をしている名も知らぬ先生Aに同情しつつ、あたしは殺気の篭った視線を無視して、淡々と授業を受け続けた。



キーンコーンカーンコーン。



あぁ、やっとチャイムが鳴って、ランチタイムだ。

あたしが席を立ち上がるより先に、綺麗な女の子たちに囲まれた。


はぁー。どうしてこんな面倒なことが起こるのか・・・。


「有園、さん。ちょっと良いかしら」

「――ハイ」


溜息を吐きたい衝動を抑えて、誘われるままに彼女達の後を追う。彼女達から逃げたって怒りが助長するだけだし、あたしが痛い目みないと納得できないようだからね――クラスの大半――否、こうなると学園中のほとんどの人が、と思ったほうが良さそうだ。


今だってお嬢様たちと連れ立って席を立ったあたしに送られる感情は――好奇・憎悪・嫉妬・優越――誰一人止めに入る人はいない。

それどころか、皆さんこの状況を愉しんでいるご様子。

こんなことが愉しいって・・・暗いよー。

まだ十代なんだから青春時代を暗黒にしちゃ勿体無いって。




そんなことを考えながら歩いていけば、甘い花の香り。


着いた場所は人気の無い、無駄に広い中庭。

なんというか、ベタといえばベタだよねー。

前の学校じゃイジメなんて無かったからなぁ・・・こんな経験値いらないんですけど。



口を開いたのはこのメンバーのリーダー格であろう美人さん。

つか、この学園美形ばっかりなんですが・・・。


「有園さん、天宮の御兄弟に随分とご迷惑を掛けているようね?」

「あー・・・そうですね。すみません」


ここで「迷惑かけていません」なんて言っても信じてはくれないでしょ?しかも事実迷惑かけまくりですから。

だから謝っておけばいいかな〜と単純バカに思っていたら、お嬢様全員からブーイング。



「これまでしてきた数々のはしたない行いを認めるのね?なんて人なの!お優しいお二人につけこんで」

「どうせ汚い手を使っているのだわ」

「お二人のお側に貴女みたいな人がいると思うと寒気がするのよ!さっさと消えてっ!」

「どうせ、生まれも育ちも最低なんでしょ!?」



口を挟む暇も無く、文句を捲くし立てた彼女達の背後からちょっと柄の悪い・・・ヤのつく職業していますかー?的なお兄さん達がぞろぞろ現れた。いや、気配は感じていたんだけどね、まさかこんな展開になるとは・・・はぁー。


「使用人風情が・・・自分の身の程をよく分かっていないみたいだから、教えてあげる」


その言葉を合図に、お兄さん達が一斉にあたしを取り囲む。

囲まれた隙間から花弁のような唇に酷薄な微笑を浮かべ、彼女達が中庭から去っていくのが見えた。



コレって・・・いじめの範疇越しているよね?

どうやらお嬢様方は愛らしい外見に似合わず大胆過激な方々のようです。

どんどん崩れていく可憐なお嬢様像・・・なんだかなー。

肩を落とし「ふぅ〜」と思わずまた溜息。


それを怖気と取ったのか強面のお兄さん達が・・・申し訳なさそうに謝ってきた・・・。




謝る・・・?




「って・・・はい?」

「いや、その、嬢ちゃんすまねぇ。俺達もこんな馬鹿げたことはしたくないんだけどな・・・若頭の命令だからよ・・・」


(えと・・・どういうことでしょーか??)





読んでくださって有難う御座います!

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