2話 運命の出会い
一緒に野球やろうよ
--本田吾朗--
「はあ、はあ・・・」
結局特訓は夜まで続いた。
「なあ隼人、高校に入ったら野球やれよ。良いセンスしてるぜ?」
まったくもってまじめだった。本当に才能はあった。
ピッチャーとしての。
「まじで・・・はあ・・・・・・いってんの?」
「ああ。大真面目」
隼人は疲れ果ててマウンドに横たわっていた。
「とりあえず家帰るか。」
「当たり・・・まえでしょ・・・」
歩くのもきつそうだったんで、せおって帰った。
~その日の夜~
隼人は、ベッドの上で横になって、あることを考えていた。
{野球・・・・・か。まあ、面白かったな。本気で・・・やってみるか}
この日は、もう寝てしまった。
~月日が流れ~
4月、もう行く高校も決まって、入学式直前だった。
いつもの場所、近くのグラウンドで、一人投げ込みを、隼人はしていた。
あれからときどき叔父に指導してもらったが、そこまでうまくはなっていない。自覚、はなかった。
ビシュ!、ビシュ!、一人で黙々と投げ込みを続ける。
と、そこへ、一人の少年が通りかかった。
自転車に乗っていて、かごには店で買ったらしき袋が入っていた。
{あれは・・・・}
そんな少年に隼人は気づかない
少年は、自転車から降りて、隼人の方へ向かってきた。
「おーい、そこの少年。何やってんだ?」
いきなり話しかけられ、少し戸惑う隼人
「?、ピッチング、だけど?」
「まあ、そりゃみりゃわかるけどさ・・・。ねえ、よければバッターボックスに立たせてくれない?
うちはしないよ、バットもないし」
{こいつ、他のピッチャーと明らかに何かが違う。何もんだ?}
少年は、内心、興味深く思っていた。
「まあ、良いけど。じゃあ投げるよ?」
そうして、少年がバッターボックスに入り、隼人が、投球モーションに入る。
{へえ、サウスポーで、サイドスローか。こりゃ対角じゃあきついかもなあ。まあさっきの球速じゃあ問題ないか。}
この瞬間、少年は右打ちでよかったと思った。水江隼人とという、ピッチャーに知り合えたのだから。
隼人がモーションに入った瞬間、少年は、ただならぬ気配を感じた。
これが本当の威圧感というものなのか、と思った。ここにいるだけでビシビシ伝わってくる
{ただものじゃあないな・・・・・・}
隼人の手からボールが離れる。ビシュ!
{さぁて、どんなボールが、!?}
彼はとっさに後ろへのけぞった。
「!?、ボールは!?」
だが、バンと当たった場所は、どう見てもストライクゾーン、しかもインコースですらなかった。
「どうしたの?」
隼人は少年に声をかける。
{何だ今のは?そんなに球速が出ていたか?いいや違う。球の威圧?それに近い。ただのクロスファイヤーじゃあそこまでの危機感はない。まるで虎に飛びかかられたみたいな。こいつは、一体?}
少年は立ち上がる。
「お前、名前は?」
「水江、隼人ですけど、何か?」
「聞いたことないな。野球経験は?どこのシニア?」
「いえ、シニアリーグには入ってませんでしたが・・・」
「じゃあ、軟式?」
「いえ、全然。て言うか野球自体約半年前ぐらいに始めたばっかで。高校で初めて野球部に入ろうかと。」
「し、初心者ぁ?」
{はあ?ありえねえだろ。あれが初心者の投げる球か?仮にもシニアNo.1チームで4番打ってた俺をのけぞらせたんだぞ!?}
「こ、高校から?初心者で高校野球かよ。」
「うん。甲子園ていうところに出てみたいし」
思わず、ふき出した
「ハハハ、マジかよ、甲子園?ハハハハハハハお前面白いな。気に入ったよ。俺の名前は斎藤俊斗。よろしく。」
「はあ、どうも。」
「てことはこれから高一?俺もなんだ。どこ?高校」
「神奈川県立横須賀・篠谷高等学校ですけど」
一瞬俊斗は顔色を変えた。
「篠谷?・・・っふ、まあ頑張れよ、甲子園」
そう言って、俊斗は立ち去ろうとした。
{篠谷、か。そういや俺も篠谷だっけな}
ふと、俊斗は立ち止った。
「そういや、誰かに教わってたの?」
「ん、まあ、プロ野球選手の叔父さんに。」
「ふーん、名前は?」
「古川誠司」
「マジか!?あの日本ハムソルジャーズの!?球界の大エースじゃん。そっか、じゃあな。頑張れよ!」
{一番の激戦区、この神奈川で生き残れたらな。俺も・・・・・・野球が出来れば・・・・・な。}
そう言って、俊斗は行ってしまった。
「なんか変な人だったなあ」
感想とかほしいです。