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【82】ペア魔導士の作戦遂行

ボクっ子を間に挟んでしまったので、かなり久々となりましたが再開します。

わりと大詰め手前ではありますが、今後ともよろしくお願いいたしますm(__)m

 ――時は少し戻り、国葬が始まった頃。


 ナシルとミシリエは、王都の市街地に待機していた。

 二人がそこにいる理由は、ダハンと言う男にここで待機して時間が来たら速やかに作戦にあたる様に指示されたためだ。男はぶっきらぼうに必要な事だけを言い、それ以外の事は何も言わない為、何を考えているのか二人にとって理解できない存在であった。


 二人が今回受けた依頼は、魔戦士組合の建物から出た所をダハンとは別の男に話しかけられて受けたものだ。その依頼は特別に極秘である為、その分金額が上乗せされていて破格の200万丸だった。

 魔戦士組合の依頼で200万丸と言う報酬は、超高難度のものや特殊な任務である場合の除いては、月単位の長期的な拘束期間のあるもの位であった。

 しかし、今回の依頼は国葬中ではあるのだが、極めて単時間で終了すると言うかなり魅力的な内容となっていた。


「んー、絶対にミスらない様に、よーく場所を確認しておこう」

「うん」


 ナシルとミシリエの任務は、ある組織のアジトとなっている建物の破壊であった。建物ごと破壊しても構わないとは言われているが、二人は建物の破壊までする必要ないと判断した。

 ただし、そうなると難しいのは周囲に危険が及ばない様に、必要最低限の火力を発動させなくてはならない。これは、大火力を要求されるより遥かに難しい事だ。

 使用する魔法は極力爆発力を伴わないものとし、もちろん建物が火事になったり倒壊しない様に属性や特性にも注意が必要である。一般人相手の対人魔法とするならばほとんど火力は必要とはしないものの、魔導士が含まれる場合も想定しないといけない。

 初弾での殲滅に失敗したとしたら反撃や逃亡される可能性があり、そうなったら作戦的にも失敗となってしまう。


「魔法はエリア・グラビティーじゃなくて、アブソーブ・フレイザを使うんだよね」

「そっ、闇魔法のエリア・グラビティーだと建物の倒壊が心配だからね。氷魔法のアブソーブ・フレイザなら、建物はダメにはなるけど倒壊まではいかないと思うし」


 エリア・グラビティーとは闇属性の大魔法で、任意の空間に重力を発生させる魔法である。捕獲などに重宝するのだが、建物内で使用するのには向かない。建物と言うものは意外と脆く、もしこの魔法を使用したならば威力を弱めたとしても簡単に倒壊してしまうだろう。かと言って、威力を弱めてしまえば逃げられる可能性も出て来る為に適切ではないと判断した。

 そこで、ミシリエは氷系の大魔法であるアブソーブ・フレイザを使用する事を提案した。この魔法は絶対0度を遥かに下回る空間温度を作り出し、全ての運動エネルギーを0にしてしまうものだ。当然その空間に囚われた生物の命は奪う事にはなるが、今回の任務はそれこそが目的である為最適なのだ。


「もうそろそろだよ」


 懐の時計を確認したミシリエがナシルに耳打ちすると、ナシルも懐の時計を確認して頷いた。


「オッケー。合図したら同時に魔法を発動しよう」


 二人が作戦を決行する時間は、国葬開始から15分経過した瞬間だった。刻一刻と近づく瞬間に、二人の緊張が高まっていく。

 魔法を発動するターゲットの階は、外からだと中を確認する事はできないのだが、それらは気にする必要はないと説明されていた。


「5、4、3、2、1!!」


 ナシルのカウントダウンを合図として、二人はゼロのタイミングでターゲットの建物内に向けてアブソーブ・フレイザを発動させた。

 建物からギシっと言うきしむ様な音が響き、建物の外側までが凍り付いた。魔法は想定通りに発動したため、おそらく1つのフロア内に存在した全ての生命は奪われたに違いない。


「よっしゃー! 作戦成功!!」


 二人はいつもの様にハイタッチをして喜んだ。


「じゃっ、あたし達も国葬を見学しに行こうか。報告はその後でもいいって言ってたもんね」

「うん、いこっ!」


 しかし、二人が歩き出してすぐ、その周囲を軍の兵に取り囲まれた。取り囲んでいる兵の数は相当なものでぱっと見でも100人以上いる。どう考えても今駆け付けた感じではない。


「え? なになに!?」

「ちょっ! 何であたし達を取り囲んでるの!?」


 周囲をぐるぐると見渡す二人が魔導士と言うこともあり、兵達は警戒してすぐにかかって来る様子はないが、一定距離を保って戦闘態勢を敷いている。

 兵達の前面には巨大なシールドを持った者が鉄壁の守りを固め、その後ろから弓を引いて狙いを付けている兵が鋭い目つきをして睨んでいた。

 その一角に細い隙間ができると、兵達の隊長らしき男が前に出て来た。


「まさか、こうも堂々と行われるとは思わなかったが……」

「「……?」」


 隊長らしき男は片手剣を肩に乗せてトントンと肩をたたいて言った。


「ちょっと、どういう事? あたし達は依頼を遂行しただけなんだけど」

「ふん。魔戦士組合に王都内で魔法をぶちかませ、なんて依頼など出ていない。しかも国葬中だ、お前たちの行為は国家反逆のテロリスト行為と見なされる」

「「テロリスト!?」」


 あっけにとられたナシルとミシリエの前に、まだ幼なさの残る2人のプリーストの少女が走って来て並ぶと、二人に向かって指を突き出した。


「パラライザー!」

「サイレンスト!」

「なっ!?」

「えっ!?」


 2人のプリーストが唱えた魔法は、麻痺の魔法と魔封じの魔法だった。その効果によりナシルとミシリエは体がしびれてその場に固まる事となった。


「よし、捕獲だ!」


 一斉に飛びかかる兵達は、ナシルとミシリエを地面へと倒すと後ろ手に頑丈そうな手錠をかけた。さらに首にも金属でできた鎖付きの拘束具をはめた。


「ぎゃっ!」

「ひゃっ!」


 手錠がかけられた事を確認すると、隊長の男は二人のそばに近寄ってしゃがんだ。


「おい、国家反逆罪のテロリストがどうなるか知ってるか? 死刑だぞ。まーだ若いのになぁ」


 隊長の男は二人の髪を指にくるりと絡めてすっと抜くと、今度は頬とアゴに指をかけて自分の方へと向けて言った。


「はっ!? ちょっと何言ってんの!? あたし達はそんなんじゃない!」

「死刑……」


 死刑と言う言葉を聞いて、二人の顔色は一瞬で青くなった。

 隊長の男はすっと立ち上がると部下に連れて行けと合図すると、合図を受け取った兵達は首の拘束具の鎖を引いて二人を強引に立たせた。


「ほら、歩け!」

「ぐぇっ!?」

「げほっ!!」


 兵達が二人の鎖を強く引いたため首から進む様な形となるが、それに抵抗する事もできずなされるままとなった。


「待って! あたし達はアローラ先生の生徒だからっ! それに神の子シンナバーと、最強の魔導士スフェーンとも親友なんだよ! 二人に聞いてみてよ!」

「なにっ!?」

「そう、これは何かの間違いだよ! あたし達を騙した黒幕がいるっ!」


 兵達が立ち止まり、隊長の男の顔を見つめた。どう対応するかの指示を待っている様だ。


「あの方達にテロリストの親友などいるか。かまわん、連れて行け!」


 鎖を引かれながらもギャーギャー騒ぐ、ナシルとミシリエの後ろ姿を二人のプリーストが見つめていた。


「んねっ、どう思うに?」

「わからないっち。でも……」

「「確かめる必要があるに」っち」



 その時だった。マトラ城の方から大きな爆発音がして、少しして空に向かってもくもくと煙が舞い上がった。


「なんだ!?」


 反射的に声を上げた隊長の男は、音のした方向へと視線を向けた。煙が上がっているのを確認するとチッと舌打ちをして、遠ざかっていくナシルとミシリエの背中を睨んだ。


「くそっ! やりやがったなー!?」


 この時、隊長の男ははじめてここが囮だった事に気が付いた。この場所からマトラ城までは走ったとしても5分以上はかかる距離がある。

 武功を焦ったせいで警備の為の兵を100名以上もこちらに移動させてしまった。その分マトラ城周辺は警備が手薄になっている。


 隊長の男は思った。あのソーサラー達の情報は、事前に軍にたれ込まれていたものであるが、よく考えてみれば確かにおかしい。

 もしテロリストだと仮定すると、彼女達のとった行動全てが謎である。二人が狙った場所は軍の施設の一つではあったのだが、式典の都合上同機関は王城内に移転していて丁度使われていなかった。

 それを知らなかったとしても、ソーサラーならば建物ごと吹き飛ばす事も可能なはずなのに、ご丁寧に一部だけをピンポイントで狙って、周囲への配慮を行っていた事。事が済んだ後に逃げようともせず、次の行動に移行しようともしていなかった事も不自然だ。

 だが、隊長の男はひとまずそれらは置いてき、兵達に爆発現場へ急行する指示を与え、自身もそこへと急いだ。


 ナシルとミシリエを移送する兵には何の指示も与えられていない為、そのまま二人は近くの兵舎の地下牢へと直行する事となる。

 そこで白地に青いシマシマの線の入っている妙な服と帽子に着替えさせられ、拘束具を付けられたまま牢に監禁されてしまったのだった。


「【番外】原始魔法とマジカルマインドとマーシャルアーツって?」に矛盾があったので一部修正しました。

原始魔法は、魔法学校で一番最初に習うと以前書いていたのですが、それをうっかり忘れてしまっていた様でなきものにしようとしていました。


それでは、今後ともどうかよしなに~!

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