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半身のペンネーム2  作者: マーたん


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4/12

第四話「知らなかった現実」

第四話では、これまで断片的に語られていた藤堂篤の「日常」を、狭間雄大の視点を通して描きました。


学校という閉じた世界で生きてきた雄大にとって、夜の街も、大人向けの仕事も、すべてが異質な現実です。


本話で重要なのは、職業や刺激的な要素そのものではなく――

「価値観の衝突」 にあります。


夢や努力が通用すると思っていた世界。

だが実際には、需要と金で回る現実も存在する。


その事実が、雄大の中に静かな揺らぎを生みます。


そして篤という人間。


彼の言葉や態度は相変わらず軽薄に見えますが、彼の周囲に広がる空気は決して軽くない。


今回のエピソードは、篤の背景を説明するためではなく、

雄大の視界を強制的に広げるための回でもあります。


物語はここから、より現実的で、より残酷な方向へと進んでいきます。

夜の街は、雄大にとって異世界に近かった。


ネオンの光。

騒がしい笑い声。

制服姿では明らかに場違いな空気。


「……なんで俺がこんな所に……」


隣を歩く藤堂篤は気だるそうに言った。


「面白いもん見せてやる」


連れてこられた雑居ビル。

薄暗い店内。


そして――彼女。


「篤の彼女です」


華やかな女だった。

場の空気に馴染みすぎている。


違和感を覚えたのは、その雰囲気。


「……仕事は……?」


女は軽く笑った。


「女優」


意外な言葉。


だが次の一言が、雄大の認識を揺らす。


「ちょっと大人向けのね」


「……え?」


篤が横から口を挟む。


「グラビア系」


女は悪びれもせず続けた。


「写真とか映像とか」


「そういう仕事」


雄大の思考が止まる。


テレビの世界とは違う響き。


「……それって……」


言葉を濁す雄大に、彼女はあっさり言った。


「脱ぐ仕事だよ」


あまりにも軽い口調。


だがその一言は重かった。


夢や華やかさとは違う現実の匂い。


「需要あるし」


「お金も悪くないし」


篤が笑う。


「現実ってやつだろ」


雄大は彼女の目を見る。


そこにあったのは、どこか冷めた光。


「……嫌じゃないのか……?」


一瞬だけ沈黙。


彼女は微かに笑った。


「別に」


短い答え。


その軽さが逆に胸へ刺さる。


夜のネオンが揺れる。


雄大は初めて、自分の知らない世界の存在を強く意識した。


そして理解する。


篤のいる場所。

自分の知らない現実。


二つの世界は、想像以上に遠かった。

第四話の核は、「知らなかった世界」です。


人間は、自分の立っている場所を基準に世界を測ります。


雄大にとっての常識。

篤にとっての常識。


そのズレが、ようやく明確な形として表面化しました。


特に意識したのは、彼女の描写です。


悲劇的にも、過度に重くもせず、

どこか淡々とした空気を持たせています。


なぜなら、この世界ではそれが「特別なことではない」からです。


非日常ではなく、日常。


その感覚こそが、雄大にとっての最大の衝撃になります。


また、篤のキャラクターも少しだけ色が変わり始めています。


単なる不良ではなく、

単なる才能の塊でもなく、


彼の立っている現実の輪郭が徐々に浮かび上がってきました。


二人の距離はまだ縮まりません。

だが、互いの世界を無視できない段階へと確実に進んでいます。

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