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Clush on Claft  作者: ユキ サワネ
一章 廻り始めた〝星〟
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三話 兆候

いつも読んで頂きありがとうございます♪

ストレス発散目的で緩く書いてます

 明け方から街中に広まる活気の正体には理由があった。


 7つの暦を終えるまで島民が1年間待ちに待った収穫祭の準備による多忙さである。


 各々が腕によりをかけ産み出した物が大いに振る舞われる収穫祭は普段の市場や街の喧騒とは次元が一回りも二回りも違うというが、その言葉に嘘は無さそうな気をさせられるほど空気が違う。


 中には収穫祭のみに限りお披露目をかねて売り出される品々もあったりして各地の島民がこぞってフルツの街に集まる。

 

 他にも、建国祭や技量祭などもあるのだが、とりわけ収穫祭は別格で、島中熱狂的となる。


 そんな最中、俺はというとギルドと王宮による長い長い拘束からようやく解放された後、祝宴を兼ねて勲功式も執り行うという事実にただただ、項垂れている。


 迷宮から帰ってきた頃、即座にガリウスと数人の探索者と共に王宮入りしてから数日間缶詰状態となっていて気が狂ってしまいそうになるほどあれやこれや書類の記入や確認が多かった。


 ある意味拷問染みた一時もようやく終わったと腑抜けてはいるもの、ガブ達の安否を気になって仕方ない。


 王宮で無事を告げられてはいたが、瀕死状態から数日経ったとはいえ全快とはいかないだろう……。


 それに報告会議の最中にしきりに確認されたある事柄についても気になる。


 俺は所属している探索者チームは無い上、師事する商会や商店もない。


 関わりがあるのはルックマンを介して出入りしている幾つかの工房と、ガブ達【バジル&チョップ】への所属まではしていないが付き合いはある。


 あくまでも後学の為だ。


 世間には気付かれていないのだが、王宮含む国家間での会議は相当な熱が入っていた。


 目撃者の証言や戦火の生々しさにおいて調査を重ねれば重ねるほど明確に俺の〝準備〟にどうにも目が行くらしい。


 生存者、特に【バジル&チョップ】の団旗を掲げるガブのチームの査収時、所持品などの質による生存率の異常さについてはある意味でケチがついた。


 地下5階のバーンズボアのカテゴリは回収された亡骸を魔素量解析した結果、上級に区分される7と判明し、〝星4〟以上の複数探索者による混成パーティで対処にあたらないと命に関わる危険性が高いと判断される結果で、ガブは確かに星4であるが、その他は皆星3。


 見識者からすれば全滅してもおかしくなかったようだ。


 この島における探索者は皆〝(センス)〟という評価で5段階に分けられるが、マグルは10段階のカテゴリに分けられており、そんなもんだから死人無しで帰ってこれた事実は奇跡に近く、それゆえ会議ではガブ達への評価も意見が割れた。


 となると、当然論点は防具や道具に向くわけで、その質や素材素からくまなく調べられた挙句、ほぼ無関係なルックマンやツチノコまで会議に駆り出され聴取される事態となった。


 低級迷宮で採集可能な素材で作られたそれらが、カテゴリ7相当の力から身を護れるという事実に国もギルドも複雑な心境で戦々恐々なわけである一方、世界の破綻を垣間見た気がしたのは、その場の皆が理解していた。


 それを読んだうえでツチノコはマイスターの権限を活かして会議中に釘を刺してくれていた。


 誰もが脳裏によぎった、中級、上級素材での結果はいかなるかという疑問は過去の記録にも記されている通り、一歩間違えれば世界の破綻に繋がると警告してくれたのだ。


 この一件で時間が経つにつれ、政治的な、きな臭さが漂い始めたのも気がかりではあるが、荒れる場内を尻目にこっそり耳元でツチノコは(ささや)いてくれた。


 「人生なんて、命あってこそじゃわい。遅かれ早かれお前さんの存在は尊ばれるも危ぶまれるも承知の助。肝心なのはこれからどう選択し、どう生きてくかじゃ。」


 島の災厄、迷宮の魔素氾濫、通称【オーバーフロー】。


 この島で、特にこの国で生きてゆくうえで避けては通れない厄介事に、あらゆるしがらみが纏わりつき絡む。


 低級迷宮素材の研究拡大やそれを使った軍備拡張のきな臭さ、各分野のマイスターをはじめとする生産系の施設強化や技術能力の向上など、どれもこれも最後は金と権力の話に繋がってしまう事このうえなく、またその際〝利〟を全く隠そうともしない場の空気に王宮内の権威のみならず隣国の王家まで巻き込む始末。


 絡み合う糸がより複雑になる泥仕合の様相を迎え、その結果、視察も兼ねていたバイスバード皇国も滞在期間を急遽延ばすと言い出してシェラサード国王はなくなくそれを受け入れていたのだが、冷静に考えれば軍事面、こと探索力に関してはグレップ国より遥かに優れる発展を魅せる国の協力になる為にそれはそれで良いとも言えるが正直俺からしたら早くこの場から去りたい。


☆☆☆


 「そういや、ムースの嬢ちゃんから言われてたんだが、早いとこ行っちゃれ。」


 ようやく解放された今となってツチノコから聞かされたのだが、女店主であるムースから新作の相談に乗ってほしいと伝言を頼まれていたらしく、一先ずムース工房へ足を運んでみた。


 元々ムース工房の主力製品は女性向けの私服が大半を占めており、男である俺のセンスで口出ししていいものか悩むところではあるが、一度作ってみたとある服が一部で好評だった事もあり、今回協力を仰がれたのだが、まぁ、ギルドを通すほどの事でもないし、内密に甘味を報酬に話に乗ってみることにした。


 作業場に着くと何人もの職人が精を出しつつ活気ある雰囲気に満ちている中、一人の若い女性がムースに助言を求めてきた。


 どうやら縫製がうまくいかず苦労している様子で、ムースはその対応にと彼女と奥の部屋へと姿を消していった。


 俺が作業台の前に座ると、数人が近寄ってきては静かに視線を落とすのだが、そのなんともくすぐったい気配に俺は笑いをこらえきれず思わず聞いて回った。


 以前、縫製した時に共に作り上げた仲間だ。


 「色男がいるってだけで嬉しいもんさ。」


 そう言葉を投げかけてきたのはムースの叔母であり、先代店主のガネットだ。


 年相応の皺はあるが、品のある出立に厳格さと柔らかさを併せ持つ彼女とは以前は数回しか言葉を交わした程度の顔見知り程度なのだが非常に頼りになる存在。


 「ガネット。ムースから注文された条件さえ守れば何作っても良いのだろうか?」


 俺がそう言うと彼女は軽く笑いを含ませながら、やりたいようにやりなと返し、俺はそれに便乗した。


 前に作った物は、どちらかと言えば探索向きで実用的な服、いわば軽装防具だったが、今回はどうするか……と悩んでみたものの、ムース工房自体の製品は(もっぱ)ら普段着や社交用に特化しており、探索者用の軽装品は数が極端に少ない。


 そんな中で可愛らしいデザインの服を作ったところで彼女達、百戦錬磨に匹敵するものなんて作れるわけがない。


 ならば前回と同じく探索者向けの軽装服を作るに限る。


 使う素材は中級迷宮で乱獲されるアイスリザードのなめし革と銀鳥の羽毛をあしらった一品。


 派手過ぎず地味過ぎず、露出し過ぎずな条件を守りつつ、素材の純粋な色合いで一つ試作品を作ってみると、その試作品に興味を持ったのか職人達が集まり始めてきた。


 「色男。普段着類でほかにも作ってみてくれないかい?」


 アイスリザードのなめし革を加工していた際に浮かび上がったデザインがあるのだが、果たして上手く加工出来るか、物は試しと思い切って縫製してみる。


 思いの外、アイスリザードの皮は伸縮性に富んでおり、なめすことによりその耐久値も数段上がるのだが、ゆえに加工時や裁断時の力加減の繊細さは問われる。


 型紙通りに切ったつもりでも実際は一回り小さめになっていたのはまだまだ腕が未熟な証拠なのだが、伸縮性のおかげでサイズの幅はカバー出来るのもまた、アイスリザードの特性のおかげだな。


 「やっぱ、アンタの作る服はいい刺激になるわね。軽装備だと真似出来ないけど、これなら何とかなりそうね。」


 ガネットの言葉に不意を突かれたのは、凛とした厳格さから放たれる直球での褒め言葉だからだろうか、妙にくすぐったく思えた。


 ―【栄華(えいが)のガネット】―

 

 それが彼女を彼女たらしめる呼称。


 ツチノコが鍛冶のマイスターなら、ガネットは縫製のマイスターなのだ。


 その彼女から誉められるのは存外悪くない。


 話を聞いた限り近々開催される収穫祭の出店で新作披露をするようでその一角を俺のデザインした私服が並ぶようだ。


 (これじゃ、ムースに呼び出されたというよりは本当はガネットが呼び出したのでは勘ぐってしまうが、黙っておくか。)


 「ところで、色男。ほれ、対価だ。」


 彼女のしなやかな腕から軽く放り投げられたそれを受け取ると素直に驚いてしまった。


 赤魔結晶。


 「いや……これは、流石に……。」


 「それだけの仕事をした。立派な対価さ。」


 魔石より質の高い魔結晶、それも赤色。


 通常、魔石は透明、碧、黃、赤と魔素量に応じて質が変わる。


 最高峰の魔石を糸も容易く差し出してくれたのは有難いが、これを機に今後も協力を仰ぐつもりだろうか。


 なんにせよ、この石があれば作ってみたい装備が作れる。


 「なんだかよく分からんが、感謝するよ、ガネット。」


 「あぁ、アンタならそれくらい渡さないと私の気がすまないからね。それと、もう一つ。」


 手渡された物は魔法袋だったが、どうやら呼びつけておいて全く相手に出来なかったムースからの謝罪混じりの対価らしい。


 これはこれで助かる。


 既製の魔法袋は手の届きづらい高級品、それを持ってるか持ってないかで探索の質は雲泥。

 

 手に取った赤魔結晶を早速魔法袋に詰め込んでいるとガネットがひっそりと耳打ちをしてきて俺は驚いたものだ。


 職業管理組合(ギルド)め、何を企んでいるのか……。

 

 嫌でも王宮内での一幕が頭をよぎる。

 「もう駄目かと思って本気でアンタらの事、恨んだからね。」


 イヴリンの笑いに満ちた声を聞いて、俺は胸を撫で下ろした。


 5人とも病床の上ではあるものの、元気そうだ。


 「ファウストがくれた防具は既に使い物になりませんが……命あってこそですね。」


 「あぁ、アレがなければ今頃どうなってた事か。」


 瀕死のイヴリン以外は皆、辛うじて当時を記憶していてその経緯を知った彼女は普段よりは落ち着いた表情で真摯に聞き入っている。


 その後の経緯を俺が話すとガブ以外は驚く反面、今回の【オーバーフロー】についてそれぞれ私見を述べるのだが、話の中心は徐々に戦果へと移り、複雑な状況になっている事も受け入れてくれた。


 「当然だろう。カテゴリ7相手に太刀打ち出来たのはファウストだけだ。俺達は負傷者を庇うだけで精一杯だったんだからな。それに、然るべき場である報告会議まで押し付けてしまって……すまなかった。色々迷惑と心配かけたな。」


 ガブが凛とした表情でそう話すと、皆が真摯に頭を下げたが、俺からするとそのおかげで目一杯やれる事をやれたわけで、互いに感謝だ。


 とりわけ4層目で出くわしたマグル達の一掃に加え、5層での負傷者達の救援、押し寄せる取り巻きを薙ぎ払いつつバーンズボアの魔力脅威から必死に皆を守ってくれたからこそ今がある。


 「さっき、ギルドカード確認したら討伐数が尋常じゃない増え方してて笑っちまった。」


 「俺が200でクルボウが180。エインやフラスコは完全後衛でマグル討伐数は無いものの負傷者の警護にあたって居た事は間違い無い。」


 イヴリンは下手打つまでは、運び屋として負傷者を1箇所に集める働きは見事だった。


 状況判断に優れている何よりの証。


 ガブとクルボウは持ち前の武技でマグルを蹴散らし、フラスコは探索前に共に大量生産していた万能薬が功を奏し、負傷者達の手当てに専念、エインは掘削用魔道具に負傷したイヴリンを保護させる間、魔力障壁を生み出す魔道具をその場であつらえ、討ちもらしたマグルの牙を防ぎきった。


 各々が遺憾なくそれぞれのやれる事をやったわけで今があるから俺一人の功績では無いと王宮で陳述はしていた。


 「一つ、報告なんだが勲功式と祝宴会は【バジル&チョップ】の快復後という決定はされている。」


 やはり驚き隠せずと言ったところか……。


 それまでに俺はやりたい事をやっておかねば。


 

 


ここまで読んで頂きありがとうございました♪

一身の都合上、不定期更新ですが、また次話読んで下されば嬉しいです♪


書き溜め… …_φ(・_・

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