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Clush on Claft  作者: ユキ サワネ
一章 廻り始めた〝星〟
1/4

一話 ようこそ、クラフ島へ

あらたな物語です。

思いついたまま書いてます

ストレス発散してます!

では第一話!

 ついさっきまで穏やかで温かく、心地良い微睡(まどろ)みに身を委ねていたのだが、誰かの声に反応してか目が醒めると眼前に立っていたのは案内人と呼ばれる年配の男、名はルックマンと聞かされた。


 ルックマンは一礼し、右手を静かに差し出すと、残る左手の掌で弧を描くように上陸を促してきた。


 俺は促されるように差し出された手を握り、いつぞやから乗っていた小舟から足下に注意を払いながら一歩踏み出した。


 俺の記憶や趣味、趣向から遠くかけ離れている身なりをしている事はともかく、素足ってのはいただけないと思ったものだが、その不満は直に解消される事となる。


 「では、こちらへ。」


 落ち着いた低音ではあるが、どこか安心感を憶えるその声に逆らうことなく船着き場から数十歩先の受付場へと足を運ぶのだが、募る不安とは別に足裏から伝わる真っ白な砂の柔らかい感触に感激した。


 (この砂は、本当に砂なのか?)


 今まで色々な浜辺の砂を感じてきたが、どの浜辺の砂よりも柔らかくて温かい。

 きめ細やかな粒に足を包まれる感覚に思わず声をあげそうになったが、ルックマンからこの島についての説明やこれからの段取りについての話を聞き漏らしてはなるまいと己を制しながら受付場へと辿り着くと、白紙に視線がいく。


 「では、こちらに。」


 自身の生い立ちから名前や生年月日、果ては趣味や特技など事細かに記された項目に情報を書き記してゆく光景は、さながら就職活動のようで思わず吹き出したのだが、この島にやって来る者は皆、一様に等しい反応をするらしい。


 かくいうルックマンもこの島に初めて来た頃を想い返しながら『同じ穴のムジナ』だと語ってくれた。


 「登録に不備はありませんね。では、こちらの用紙にこれからの貴方の名を書き記して下さい。その名が、この島でのこれからの生活に必要となりますので。」


 「新たな名か… …。」


 どうやらこの島ではこれ迄の生き様や常識とはうって変わる生活になる、いわば二度目の人生のようなもの。


 思い切ってふざけた名前でもいいようだが、先祖から想いを繋がれてきた人生。

 そこから連想出来る名にしようと決めて白紙にその名を書き記すとルックマンは、その紙を持ってにこやかに呟いた。


 「では、これで全ての手続きは終了となります。後は神殿の神官に引き継ぎとなりますので、そちら迄ご案内致します。道中に幾つか名所や施設の説明はしますが、ほんの一部となります。ご興味がお有りでしたらご自身の目や耳で確認されると良いかと。では、こちらで身なりを整えましょう。」


 受付場で渡された衣装に着替えた後、神殿までの道中で市場や釣り場や訓練所やら綺麗に整った環境が目に飛び込む度、自分の五感がビンビンに反応して期待に胸が膨らむと、不安の二文字はいつしか片隅へと追いやられていた。


 「神殿長、ルックマンです。予定通り新たなる希望の星を洗礼の儀にお連れ致しました。入殿のご許可を承りたく存じ上げます。」


 辿り着いたそこは、壮大な聖堂であり、その外観に息を呑んでしまうほどで、どこからか声が響くのだがまるで見当がつかない。

 重厚な正門がゆっくりと開いてゆくと神殿の中は如何にもファンタジックな雰囲気で魅了してくる。

 白銀の大柱が幾つも並び、床は鏡面になっており、自ずと心が弾む。


 本来ならば、年に数回しか開かれない大聖堂の儀式の間はそうやすやすとは出入り出来ないらしい。


 思いの外、中の空気が澄んでいるようにさえ思えるその場は不思議な感覚に充てられている気がした。


 「お待ちしておりました、新たなる希望の星よ。こちらへ。」


 迎え入れてくれた神殿長である淑女は案内人諸共、聖堂の奥にある洗礼場に案内し、台座中央に設置されている見事なまでに透き通った水晶に手を添えるように俺に促すと、その光景を神殿長と数人の神官とルックマンは静かに見守っていた。


 最早、静寂の音さえ聞こえてきそうなほどに静まり返るその場でしばし待つと、ふと何かの圧力と言うべきか、その何かが身体からすり抜けるように感じ取れたその矢先、聖堂の大鐘楼が響く。

 伝わる振動と音の大きさで心底心臓が止まりそうな気になったが、直後神官達は歓喜に満ち、ルックマンは冷静な表情でこちらを観て微笑む。


 大鐘楼の澄んだ音色は当然島中に響き渡るのだが、同時に神殿長の顔色は島の空模様とは裏腹な曇り模様。


 「『ユールグ・ファングの担い手』ですか……しかも三星(センス・スリー)ともなるとこれは……。」


 ルックマンも静かに頷きながら答える。


 話を聞くとどうやら洗礼の儀で個々の特性を顕在させ、それぞれに見合った道を神殿が標すようだ。

 例えば、『アーラの魔眼』と呼ばれる特性持ちなら魔力に長けており、それを遺憾なく発揮できる環境や職に就けるように、また、『ハルピンの魂片』と呼ばれる特性持ちなら強靭な体躯や運動能力に長けており、戦闘系をはじめとするあらゆる体力職に向くので、この洗礼の儀はそれらを把握するいわばお披露目の場であるのだが……『ユールグ・ファングの担い手』とは、大雄士の一人とされる創造士、ユールグ・ファングの魂を宿す者のみが持つ特性である。


 外から島にやって来る者は必ず何かしらの特性持ちとして決まっているが『センス』と呼ばれる星は1つからが定石。

 その星が3つから始まるのは極稀である。


 ゆえにこの事実がルックマンと神殿長から今後の期待や面白しさの反面、相応の負荷が予見できるらしく、これからの生活に一抹の不安が芽生えたと告げられた。


 『センス』は今後の活躍や日々の過ごし方で如何様にも乱高下するようで思わず俺は吹き出してしまった。


 職人としてあらゆるモノ作りをしてきた為か、何でも作る事に飽きない性格なだけに無用の心配と感じ取ったわけなんだが、そこは先人達の生き字引、しっかりアドバイスとして胸に刻んでおくと告げると、二人の硬い表情が解れたように見えた。


 「さて、洗礼の儀も終えた事ですし、これから貴殿の住まいまで案内しま……。」


 神殿長の言葉を遮る形でルックマンがしなやかな腕を挙げると同時に自身が送り届けると申し出て、神官たちは一瞬戸惑う姿勢を示したが、神殿長が穏やかに頭を下げて依頼すると、ルックマンは嬉しそうに白い歯を剥き出したが、神殿長はすかさず彼に耳打ちすると、ルックマンは更に高らかに笑った。


 神殿を離れ、ルックマンと共に住まいへと足を運ぶ道中にとある建物に立ち寄ることになった。


 あらゆる店舗が軒並み建ち並ぶそこは、浜辺から神殿に向かう道から見えた活気あふれる市場通りで、特性を(かんが)みて、一軒の立派な造りの店に案内されると、店奥から主人が出張ってきて、親しげに彼と言葉を交わすと、ルックマンから主人を紹介され、挨拶を交わした。


 主人の名はツチノコという。


 名の由来は幻の生物ではなく、【槌の童(つちのわらべ)】、金槌の使い手という意味からとっており、更にはその名に恥じぬ鍛治師向きの特性である『ゴルドマイスト』の五星という。

 すなわち、この島一番の鍛治師である。


 「コイツぁ、楽しみだな!ええ面構えしちょる!」


 紹介したルックマンも嬉しそうにしている中、ツチノコから何か造ってみろと背中を推され鍛冶場を見渡すと綺麗に整えられた資材箱に目移りがする。

 見たことある素材から知見の及ばない素材まである中でふと、目についたのは蒼色の石と鉛色に鈍く輝く鉱石だった。


 「コイツぁ、楽しみだな!ええ眼しちょる!」


 「新人が選ぶ物では無いですね。」


 二人の掛け合いは明らかに互いへの言葉のキャッチボールなのだが、視線は俺に突き刺さっていた。


 高温の窯に鉱石を熱しながら型どっていく中で鍛造を繰り返せるのも過去に鍛冶師の真似事をしていた経験値からくるものなのだが、どの程度の速度や強度、リズム、加減をすればいいか何となくコツが理解出来るのは特性のお陰で有るのだろうと深く感嘆した。


 素材は初めて見る物であり、何より作り上げる物の最終的な仕上がり具合が脳裏に浮かんでいるのだ。


 早速、特性の恩恵を感じつつ、鍛造に打ち込む事小一時間。

 出来上がった物は蒼く鋭い刃に長剣とはいかないもののそこそこ長い刀身の頑丈な刀と言える。


 ツチノコから挨拶代わりと渡された鍔は一見シンプルで軽いがこれまた頑丈な逸品を貰い受け、柄と併せ作り上げた刀は当初脳裏に浮かんだ姿形にほぼほぼ近い仕上がりである。


 完成品を手に取り舐め回す様に診るツチノコの視線が緩むと豪快な笑いが生まれ、ルックマンもその名に恥じぬ目利きをしていた。


 ―上手く作れた。―

 その想いだけで満足したのか俺のその後の記憶は自宅のベッドの上で横たわった状態からみる景色に染まっていた。

 

 夢であったのかと思わず現実を疑ったが、傍らに立てかけられていた刀に気付いて安堵し、添えられていた手紙にこう記されていた。


 ―ソイツに名前をつけちゃれ―

 誰に告げることもなく浮かんだ名を呼ぼうとしたが、大切な瞬間な気がして、もう少し悩んでみるかと呟いていた。


 恐らくはこの一振りを造るのに大量の力を使ったのだ。

 その直感はベッドから起き上がって、部屋の中央にある食卓上の置き手紙を見て確信に変わった。


 手紙を読み込むと、慣れないうちは耐性が乏しく作業効率は悪いと云われているが、慣れれば耐性が付き、作業効率は自然と上がるとされる事実。


 自画自賛になるがそこはまさに俺の性格にはうってつけであり、心の底から一種の弾みが感じ取れた。


 置き手紙と壮大な島の一部の地図と共に用意されていた食べ物を口に運びながら最後の一文にこう記されていた。


 ―ようこそ、クラフ島へ。ファウスト殿。―


 新たなる人生の始まりなのだと内なる己が産声をあげて俺は手紙に記されていた通り、食べ物の横にあるもう一つの箱に触手を伸ばし歓喜に酔いしれ、腹拵えを終えると明日が待ちきれないせいか自然と身体は自宅の隅々から夜の街並みへと吸い込まれるように動いていた。

 「おい、おい、おい、おい!!三星のプロテクトターンに一年てなんだよ!?ギルドの職権乱用じゃねーのか!」


 「戯け、枯芝猿。但書をよく見てみな。」


 クラフ島職業管理組合、通称『ギルド』で名うての冒険者達が噂を聞きつけて建物内にひしめく中、凄腕の受付婆……

もとい受付嬢のハムが血気盛んな冒険者へと逆に食って掛かるように覚書の下の但書を読みきかせる。

 

 【但し、保護期間中に関わることなく正規の手順でのみ売買を許可】


 「こんなノミみたいに小せぇ字で書かれても誰も気付かねーよ!?」


 「ワイナーの負けだよ。その程度で狼狽えるなんて。」


 名うての冒険者の殆どが気付くことなく見過ごしたのは但書に視覚阻害系の魔力加工を施されていたからであるが、それを見抜くのもまた腕のある証であり、ギルドの遊び心と心得なければならず剣士ワイナーの性格を知り尽くす魔技士のハルは相変わらず彼をおちょくって愉しんでいる。


 小馬鹿にされるワイナーだが、彼自身その魔力加工を見破る力が乏しい事を理解している為か日頃の付き合いからかハルには頭が上がらずモヤモヤとした苦悶を浮かべる。


 「心配しなくともこの但書に気付いた冒険者は片手で数えられる程よ。新星はセンスに関係無く等しく保護対象なんだから直接の接触は出来ないのは当たり前!でも商品として市場に出てきたら売買は出来るから騒ぐんじゃないよ。」


 一頻り騒ぎが落ち着きを見せた頃、一人の壮年男性が姿を現す。


 「今日はやけに騒がしいな。【新月の暁】かと勘違いするところだ。」


 上階の手摺越しから覗く組合長【ギルドマスター】のジョブが階下の強者達にそう投げかけると、ワイナーはその場からジョブに問いかけた。


 「今回の星は相当ヤバいな……お前らが今ここに居るのはあの瞬間、迷宮に居たんだろう?何も感じなかったのか?」


 方方、顔を見合わせる中、数人は言葉を発し、改めてその言葉の意義を皆が確認した。


 「いいか、冒険者よく聞け。過去、この島を開拓してきた先人達の記録によると三星の登場は時代のうねりや進化の証とされる。この国の王宮やギルドだけじゃなく、隣国からもどうすべきか協議しているし慎重にならざるを得ない。現に数日前から各国で確認されている迷宮の魔素濃度然り、魔物の強度然り、まるで新月の暁のようだと感じている所に三星の登場だ。混乱を加速させるわけにはいかんというのが、島全域の総意として心得てくれ。」


 「だったら三星を囲うのは逆効果じゃねーのか?第一線でバリバリ働かせりゃセンス上げも早くなるじゃねーか。」


 「馬鹿ワイナー……。」


 呆れ気味にハルがそう口にすると何か言いかけようとしたが察したジョブが言い放つ。


 「気持ちは解る。が……急いては事を仕損じるという言葉があるように三星とはいえ、武具一つで力尽きる程度だ。(まぁ、当然なんだがな……この事実はさてどうするか……)」


 一瞬、沈黙が場を支配し、空気は微妙に動いたその機をジョブは見逃さなかった。


 「期待の新星とはいえ今は大した力は有りはしないんだ。理解できたら散った散った!」


 名うての顔ぶれを上階から手払いする様は期待感を削ぐ形に思えたが、その実、ジョブの内心は心臓が張り裂けそうなくらい脈を打っていた。


 (言えるかよ、三星が初日に五星の刀造ってぶっ倒れたとか、どんだけ次元がズレてるんだっつーの。)

 


ここまで読んで頂きありがとうございました♪

一身の都合上、不定期更新ですが、また次話読んで下されば嬉しいです♪


書き溜め… …_φ(・_・

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