第14章 ソウルシールド
ベン・ゼンは、ようやくクエストを達成した。
――だが、クエストログのタイマーは、まだ止まっていなかった。
これはつまり……トレーナーに話しかける前に時間が切れたら、失敗になるということか?
「ムー……」ベンの声に不安がにじんだ。「
パラディンの魂は手に入れたけど、タイマーがまだ動いてる。
これがゼロになる前にトレーナーに話しかけないと、
クエスト、失敗になるのか?」
「可能性はある」ムーランは冷静に答えた。「
残り、どれくらいだ?」
「9分48秒……」ベンの声が震えた。「
街まで40~45分もかかったんだぞ?
10分で戻れるわけないだろ!?」
「心配するな」ムーランは静かに言った。「
5分で着く。
俺の後ろについて来い。
考えんな。周囲に反応するな。
目は俺だけを見ろ。
そしてまず――重い装備を全部インベントリから捨てろ。
1グラムでも、足を引っ張る。」
「了解!」
ベンは即座に不要な装備を放棄した。「
準備はOK! 次はどうする?」
「走る。
グリーン・ウルフの縄張りを真っ直ぐ突っ切って、街まで一直線。
今、俺たちには防具も支援もない。
一歩間違えれば、即死だ。
だから、本気で走れ。
俺の踏んだ場所を踏み、俺のペースに合わせろ。
後ろを見るな。」
「わかった」ベンは力強く頷いた。「
街門まで、レースだ。」
二人には明確な目標があった――
9分以内にパラディントレーナーに到達する。
果たして、可能なのか?
迷いは捨てた。
今、ここにあるのはただ一つ――街門への執念。
「『4』で行く」ムーランが言った。
「準備はいいか?」
「……うん。」
「1……
2……
3……
4!」
「4」の声と同時に、二人は爆発的に駆け出した。
森を貫く二本の矢のように。
グリーン・ウルフが襲いかかるが、爪は空を裂くだけ。
二人はモンスターの群れを縫うように走り抜けた。
まるでF1マシンが高速コーナーを切り抜けるように――
前世の記憶が導く最短ルートを、完璧な連携で疾走した。
1分もかからず、エメラルドの森を抜け出した。
休むことなく、次々とモンスターゾーンを突き進む。
このショートカットは、ムーランが未来を知らなければ絶対に通れない道だった。
そして――5分後。
二人は街門の前に立っていた。
ベンは目を見開き、息を呑んだ。「
ムー……俺たち……どうやって……?」
言葉が続かない。
5分で戻るなんて、奇跡としか思えなかった。
「感動してる暇はない」ムーランはすでに歩き出していた。「
残り4分だ。油断は禁物だぞ。」
「あ、ああ! 報酬、もらいに行くぞ!」
2分後――
二人はパラディントレーナーの前に到着。
クエストタイマーには、残り2分が表示されていた。
NPCは、まるですべてを見通していたかのように、
温かく微笑んだ。
「若きパラディンよ……
お前が成功するとは、最初から分かっていた。
儀礼は不要だ。
さあ、報酬を受け取れ。」
ディン!
[ソウルシールド]
レベル:0
防御力:+50
移動速度:-5%
この盾は装備時に使用者に永久固定される。
パラディンがレベルアップするたび、ソウルシールドも共に成長する。
「ムー、見てこれ!」
ベンの目が、文字通り輝いた。「
マジで神装じゃねえか!
ありがとう……お前、俺を置いてけぼりにしなくて本当にありがとう。
自分の装備が光りまくって、
親友が素手で戦ってるの見過ごせなかっただろ?
正直に言えよ!」
ムーランはにやりと笑った。「
その通り。
こんなに凄いパラディンが、まともな盾なしで戦うの見てたら、
俺が死んでしまうだろ?
これで俺たちの防御は鉄壁だ。
レベル上げも、今までよりずっと速くなる。
それに――
次は本格的な防具も用意する。
そうすれば、お前がモンスターを引きつけても、
一撃で即死しなくて済む。」
「ちょっと待て」ベンが目を細めた。「
……マジで、俺をモンスターベイトにしてんのか?」
「もちろんだろ!」ムーランは大笑いした。「
それが、パラディンの役目じゃん!」
「信じられねぇ……
全部、俺を生け贄にするためかよ?」
「冗談だよ、冗談!」
ムーランは彼の肩をバシッと叩いた。「
お前の防御を上げるのは、グループ戦でも生き残れるようにするため。
集団襲撃でも、倒れないようにするため。
誰一人として、お前の盾を突破させないために――
そう思って、準備したんだ。」
ベンは鼻をすすり、素早くまばたきした。「
……はぁ、泣かせやがって、クソ野郎。
最初からそう言ってくれてたら、
こんなに心配しなかったのに……」
「まあいい」ムーランは薄笑いを浮かべた。「
ソウルシールド、装備しろ。
どんな感じか、見てみよう。」
「任せてろ。」
ベンが盾を装備した瞬間――
柔らかく、だが確かな光が盾の表面から放たれた。
その光は、彼の装備を包み込み、
本物の聖騎士のような威厳を纏わせた。
「……おう、ベン」ムーランの声に、 genuine な驚きが混じっていた。「
お前、光ってるぜ。」
「だろ!?」ベンは満面の笑みを浮かべた。「
レジェンド装備だし、永久固定だしね。
手放すなんて、絶対ありえない。
ありがとう、ムー。
本当に、最高のプレゼントだよ。」
二人は少しの間、静かにその勝利を味わった。
だが、ベンの表情が急に固まった。
「……待てよ、ムー。
今、何時だ?
何か、忘れてないか?
学校だ! 朝のトレーニングだ!
ゲームでレベル上げしてるからって、
現実をサボるわけにはいかないだろ?
俺たち、規律を守るって決めたはずだ。」
ムーランは時計を確認した。
「……まったくその通りだ。
ゲームだろうが何だろうが、ルーティンは崩さない。」
「その通り!」ベンはすでに出口に向かって歩き出していた。「
朝のランと筋トレを終えて、
ちゃんと学校に行くぞ。」
そして就这样に――
二人の英雄は、デジタルの世界から静かに足を引き、
現実の人生へと戻っていった。




