第11章 パラディンの魂
一瞬の猶予もなく、ムーランとベン・ゼンはパラディントレーナーの元へと向かった。
3、4分もしないうちに、二人はその前に立っていた。
すると、NPCは即座に口を開いた。
「神への挑戦」のAIは、驚異的なほど高度だった。
NPCはただ台詞を読むだけの存在ではない。
まるで本物の人間のように、状況に応じて反応する。
トレーナーはベンを見ると、温かく微笑んだ。
彼がすべての初心者訓練を完了したという情報は、
自動的に関連NPCに共有されていたのだ。
「若きパラディンよ」
トレーナーの目が、満足げに輝いた。
「お前の魂は、すでに鍛えられている。
だが、真のパラディンの力は――魂と盾の調和から生まれる。
さらにその魂を高めたいのなら、今、私が与える試練を受けよ。
成功すれば……お前の魂が目覚める。」
ディン!
[隠しクエスト:パラディンの魂]
全ての初心者訓練を完了したパラディンのみが受諾可能。
成否は、魂の強さに完全に依存する。
目的:パラディンの魂を覚醒せよ
制限時間:3:00:00
[報酬]
ソウルシールド
[失敗ペナルティ]
名声:-50
ベンの顔が青ざめた。
「ムー……クエスト受けちゃったけど、
時間制限あるし、やり方も全然わかんない!
失敗したら50も名声減るだろ? それ、マジで地獄だぞ!
助けてくれ!」
「落ち着け」ムーランは静かに言った。「詳細を教えてくれ。
俺たちで、絶対にやってのける。
その盾、手に入れるんだ。」
「わかった……」
ベンは深呼吸して、クエスト内容をすべて話した。
街を出る前に、二人はもう一つだけ立ち寄った――
アーチャートレーナーの元へ。
NPCはムーランを見ると、敬意を込めて軽く会釈し、
何も言わず、完成した矢筒を差し出した。
[魔法の矢筒]
レベル:0
攻撃ボーナス:+1~5
攻撃速度:+5%
特殊効果:無限矢生成
この装備は装備時に使用者に永久固定される。強化可能。
今すぐ装備しますか?
[はい]/[いいえ]
ムーランは迷わず「はい」を選択した。
矢筒が背中に収まった瞬間――
白く柔らかな光が、その表面から脈打った。
市販の装備とは比べものにならない、
生命を宿したような輝き。
「うわっ!」ベンが目を丸くした。「ムー、お前、光ってるじゃねえか!
マジで? 俺がまだクエストで悩んでる間に、
もう装備完成させてんのかよ!? ずるい!」
ムーランは薄く笑った。「狩り始めたら、
俺の装備全部見て言葉失うぞ。覚悟しとけ。」
「はぁ、もういいよ……でも俺はどうすりゃいいの?
“無敵の二人”って言ってただろ? 置いてかないでくれよ!」
「置いてかない」ムーランは彼の肩を軽く叩いた。
「だからこそ、お前のクエストを今すぐ終わらせる。
残り時間は3時間。
これを逃したら、50の名声を失う――
そして、一生俺にからかわれるぞ。
行くぞ。」
街門を出ると、そこは混沌だった。
数百人のプレイヤーが低レベルゾーンを埋め尽くし、
1体のレベル1モンスターに30人も群がる有様。
5分かけて倒して、得られる経験値は微々たるもの。
まるで、ただの労働現場だ。
「ムー……」ベンが呻いた。「戦う場所すらないよ。
もっと奥に行けば、強いモンスターがいるし……
50の名声、もう諦めるしかないのかな……」
「心配するな」ムーランは平静だった。「
その盾、絶対に手に入れる。
レベル5ゾーンへ行く。
直感で、そこが試練の場だとわかる。」
「レベル5!?」ベンは息をのんだ。「
マジで言ってんのか? レベル1を倒すのに30人必要なんだぞ?
レベル5を二人で倒せるわけないだろ!
もうペナルティ受け入れた方がマシなんじゃないか……」
ムーランは真っ直ぐ彼の目を見た。
「俺を信じるか、信じないか――それだけだ。
言ったろ? その盾を手に入れるって。
しかも、ただの盾じゃない。
俺の矢筒と同じ――永久固定、強化可能、輝く装備だ。
自分の盾が光るの、見たくないか?
自分を信じろ。やるんだ。」
ベンは一瞬、迷った。
そして、静かに頷いた。
「……わかった。
お前に任せる。」
45分の道のりを経て、二人はエメラルドの森に到着した。
木漏れ日が苔むした大地を金色に染め、
空気には松と土の香りが満ちていた。
まるで、童話の世界に迷い込んだようだ。
だが、美しさの裏には――死の影が潜んでいた。
ここはグリーン・ウルフの縄張り。
エメラルド色の毛並みが森に溶け込み、
音もなく忍び寄る、獰猛な捕食者。
体高は1メートル近く。
その動きは影のごとく、一撃は確実に命を奪う。
[グリーン・ウルフ]
レベル:5
HP:500
攻撃力:50~100
ムーランがクエストの残り時間を確認した。
残り時間:2:00:00
「ちょうどいい」
彼は静かに矢を番え、弓を引いた。
「さあ、ベン――
お前の魂を、目覚めさせる時だ。」




