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サイバーパンク2023-そのTSモブ兼女ザコは反射とエネルギー操作を操る-  作者: 東山琉生
チャプター2 プルス・ウルトラ、さらなる高みへ
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EP8 月は無慈悲な夜の女王

 僕はニーナとリミを指差す。彼女たちは見つめ合ってしばし考えたあと、


「うん……。生きて帰ってきてよ」

「どうしようもないしね……」リミは諦観気味だった。

「そう、どうしようもないんだ。リミ。そもそも私らは一蓮托生だし、君らは隠れ家で結果報告だけ待っていれば良い。大丈夫、私は〝エネルギー操作〟を使えるんだから。それに……」


 僕はレイに目をやる。彼は不敵な笑みを浮かべ、


「よろしい。スマホを出せ。敵性のヤサの住所を打ち込んでやる」

「ウォーカー、敵はどんな能力を使うの?」僕は尋ねる。

「〝レッド・アラート〟という能力だ。ヤツは音を操る能力者。ヤツから発せられる音は、文字通りすべてを壊す。車もアスファルトも、だ。さすがこのウィング・シティを支配しようと企んでる組織の幹部なだけあるな?」

「なるほど。ちなみに、音はエネルギーだよね?」

「音は空気の振動で発生するエネルギーだろう。もちろん、どう攻略するかは任せる。ただまあ、ヤツのヤサには大量のボディーガードがいるのを忘れずに」

「……、アーキーもおいていけと?」

「それこそ自分で決めろ。おれの見立てが正しければ、オマエを除いて全員ランクDかつ無能力者だろうが」

「分かった。アーキー、どうする?」


 僕は狭い部屋でアーキーに向き直し、彼女に確認をとっておく。


「オマエをおいて温かい部屋で寝てられねぇよ。さっき助けられた恩もあるし」

「分かった。でも、そんなチャッチイ拳銃じゃいつ暴発するか分からない。現地調達しよう」

「よし……」

「それでは、お二方。健闘を祈ってるぞ。そこのふたりはヤサへの地図を用意する」


 指をゴキゴキ鳴らし、僕は臨戦態勢に入る。

 まず、この作戦はとことん時短しなければならない。警察機関が崩壊しているウィング・シティで時短なんて意味がないかもしれないが、そこは僕の手に入れたギアが関係してくる。

 大前提として、僕のギアは時間経過とともに、感情が乏しくなり近くにいる者を滅多殺しにしてしまう〝サイコ・キラー〟になってしまう。慣れていけば〝サイコ・キラー〟になるまでの時間も伸びるが、最初のうちは10分が関の山だろう。つまり、10分だけこの街トップクラスの能力者となれるわけだ。

 となれば、やはり時間をどれだけ短縮できるかに懸っている。仮に〝サイコ・キラー〟になって感情が乏しくなったとする、そして女ザコを痛めつけても、感情が弱いためあまり感動を得られない。さらに、この女ザコどもを痛めつけて良いのは、僕だけだ。


「さあ、行こう」

「お、おう」


 そういう複雑な感情を抱きながら、僕たちは1キロメートル先のフロンティア幹部邸へ向かう。


 *


「豪邸だねぇ」

「な、なあ。ホントにここをたたくのか?」

「今更怖気ついた?」笑みを交える。

「そりゃあ、ギャングだらけのヤサ見れば誰だって……」

「闘いは数が決定打になるわけじゃない」


 そう、僕の能力的に、数十人ほどのギャングなんて敵ではない。


「とりあえず、離れていて」


 僕は空に手をかざす。空には無慈悲な女王、月が広がっている。これより得られるエネルギーは、光は、ギャングたちの豪華な隠れ家を吹き飛ばすのに十分だ。


「あ、ああ」


 僕は右手でデバイスの電源を入れ、そのまま野球ボールでも投げるような動作で手を動かした。

 そして、

 衝撃波が、広々とした一軒家を徹底的に破壊した。

 辺りから悲鳴や嗚咽が聴こえる。ここまでの威力なら、確実に死者が出ているだろう。それでも、僕は眉ひとつ動かさない。

 そのまま後ろを振り向き、一旦デバイスの電源を切る。


「大丈夫だった?」


 アーキーは口をポカンと開け、突っ立っていた。


「大丈夫もなにも……、アンタ、無慈悲だね」

「そうじゃないと、この街じゃ生きていけないよ」


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