表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイバーパンク2023-そのTSモブ兼女ザコは反射とエネルギー操作を操る-  作者: 東山琉生
チャプター2 プルス・ウルトラ、さらなる高みへ
8/53

EP7 情報屋の元へ

 僕と女ザコたちは、街を歩いていた。行く宛などはない。隠れ家すら持っていないのだから仕方ない。


「なあ、ラーキ」


 ただ練り歩いているだけの僕らに違和感を覚えたか、アーキーが話しかけてきた。


「これからどうするんだ?」

「どうする? そんなの、ノープランだよ」

「は?」

「隠れられる場所もなければ、一時的に髪染めできるスプレーを買うカネすらない。ここは僕らを追ってくるブラッドハウンズがいないから、ただ歩いているだけさ」

「おま、無責任だな……」

「仕方ないでしょ。ニーナとリミを見てごらんよ。疲れすぎて喋りすらしない」


 相当歩いている。車でも奪ったほうが良いのだろうか。しかし、奪った車が別の裏組織のものだったら、面倒事が重なるだけでもある。


「けど、このままホームレスみたく歩くのにも限界あるぞ?」

「分かっているさ。そうだな……。ヤサを提供してくれるバイヤーに会ってみる?」

「ヤサ?」

「隠れ家って意味。私が知っている限り、このボロ家にヤツは住んでいるはずさ」

「カネはどうするの?」

「ひとまず後払いにする。ただ、私の予想だと3日以内にカネを納めなければ、ブラッドハウンズに密告されるだろうね」


 本来の主人公はこの近くで〝ヤサ〟を用意してくれる存在と出会うわけだが、果たして髪色すら統一されている、女ザコの僕らに彼が家を提供してくれるものか。


「それともなければ、面倒事を解決させられるかね」


 僕は淡々とした態度でそう答えた。

 なお、ニーナとリミは疲労困憊といった感じで、先ほどから一言も発していない。着いてくるのがやっと、という感じだ。色々疲れたのだろう。ただ、こんなのを率いるなんて、それ自体が緩慢な自殺とも思ってしまう。


「さて、入ろう」


 古びた家。ウィング・シティというサイバーパンクな街にも、こういうのは少なからず残っている。とはいえ、それそのものはあまり関係ない。

 僕はインターホンを鳴らし、


「レイ・ウォーカー。ちょっと相談がある」


 と告げる。


『ブラッドハウンズの第10隊をぶっ潰した、とんでもガールがなんの用だ?』

「ここで話すのも変だ。中、入れてくれ」

『ああ』


 ロックが解錠された。


「みんな、行こう」


 全員が頷いた頃、僕らは散らかったレイ・ウォーカーの部屋へ入っていく。

 細身の男が、モニターとにらめっこしていた。パーカーを被り、なにやらフェイスマスクを着けている。


「ウォーカー、単刀直入に言う。提案だ。アンタの厄介事をひとつ解決するので、隠れ家を用意してくれ」

「単刀直入過ぎるだろう。まぁ良い。おれは客を選ばん。大統領から乞食まで相手してやる」レイ・ウォーカーはモニターより僕らへ向き合う。「つい数時間前、ブラッドハウンズの切り札的存在だったギアが奪われた。もちろんおれはそれがどこにあるか知らんが……ともかく、汚れ仕事をする代わりにヤサを提供してほしいんだな。良い提案だ」


 レイ・ウォーカー。彼は情報のプロフェッショナルだ。ウィング・シティ中の情報は、彼がすべて握っている。そんなレイは続けた。


「フロンティア、という組織を知ってるか?」

「もちろん。ブラッドハウンズと反目のギャングどもでしょ?」

「そのギャングスタの幹部の首を獲ってきたら、ヤサを提供してやる」


 先ほどまでクタクタだったニーナが、突然会話に乱入してくる。


「フロンティア!? あのギャングども!?」

「どうした、いきなり声荒げて」レイは眉を潜める。

「だって、アイツらブラッドハウンズと対抗できるくらい強いんだよ? 銃器も能力者もたくさんいるし、なにより、ブラッドハウンズがここを仕切るフロンティアに手出ししないのがすべてでしょ!?」

「落ち着いて、ニーナ。まだ話を呑むと決めたわけじゃあない」

「え、じゃあ別の仕事を──」

「ウォーカー、引き受けた。その代わり、このふたりは作戦に参加しない。先に隠れ家への地図を渡してくれ」

「なるほど。ただ、幹部を獲れなかったらこのふたり諸共始末するが」

「それで構わないよね? ふたりとも」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ