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サイバーパンク2023-そのTSモブ兼女ザコは反射とエネルギー操作を操る-  作者: 東山琉生
チャプター1 ようこそ、〝世界最悪の街〟ウィング・シティへ
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EP4 ギアとジェットパック

 最上階まで1分弱かからず着いた。僕は銃を構えるが、そこは(もぬけ)の殻。ゲームシステム的に、警備員も配置されていないのだろう、と考えつつ、真っ暗な部屋の中をスマホのライトで照らしながら、歩いていく。


「本当にここへ〝ギア〟があるの?」

「ニーナ、そこに光当てて」


 不安げなニーナを安心させるように、僕はその〝ギア〟が置かれているはずの場所へ光を当てさせる。

 そこには、無機質なケースがあった。近くにはいわゆるジェットパック。物理法則や人間の耐久性やらを無視して、装着すれば空を飛べる代物だ。


「え、これ?」

「うん」


 僕はケースを開ける。本来ならここでハッキングしなくてはならないが、今回は裏技でここに来ている。そのため、そもそも鍵がかかっていない。

 では、お宝との対面を迎えよう。


「なんだ、これ」アーキーは怪訝そうな表情になる。「骨伝導イヤホン? 〝ギア〟って身体に装着するモンだって聞いてたけど、これ外部装置みたいなモンじゃねぇの?」

「ああ、そうだね。外部装置さ。だから、正気度がそんなに下がらない」

「しょ、正気度?」吃りながら、リミが尋ねてくる。

「強力な〝ギア〟をたくさん着けられるのは、精神状態が尋常でないほど安定している者のみ。この街の上位1パーセントってところかな。まぁ、そんなことどうでも良い。時間がないからね」


 僕は骨伝導イヤホンみたいなデバイスを、耳に巻く。そして右側に触れた。


「おお……」


 〝ギア〟をインストールする際、このゲームの登場人物はこう言う。『薬物の過剰摂取のようだ』と。しかし、僕の身体にその異変は起きなかった。


「よし、ジェットパックで逃げよう」

「ジェットパック?」ニーナは怪訝な顔になる。

「そこにある。あれを背負って……ああ、いいや。天井をぶっ壊す」


 空っぽになったケースを持ち、僕はそれを天に向けて投げる。

 そうすれば、

 凄まじい加速がかかり、まさに大砲のような威力で天井が壊されていく。


「は」

「は」

「は」


 全員呆然とする中、僕はジェットパックをランドセルのように背負った。


「ほら、残り1分もしないうちに来るよ。さっさとトンズラしよう」


 この街特有の汚い空気と濁った空が見える中、僕は彼女たちに指示を出す。

 少しの間微塵も動かなかった彼女たちも、やがてこの〝ギア〟の恐ろしさを知ったようだ。各々ジェットパックを装着し、警報音が響く中、僕たちは逃げ道へ向かう。


「発射!!」


 操作は5歳児でもできるようになっているらしく、右の取手に空へ跳ねる赤いボタン。左には加減速を操作するパネル。便利なことだ。


「「「うわぁあああああ!!」」」


 発射された時点でこんなに慌てているようだったら、主人公には敵わなかっただろう。白目を剥きながら唾だらけになる姿が良いなと思いつつ、僕はパックを傾けて空を駆け抜けていく。


「ラーキ、これどうやって扱うの!? てか、なんで操作方法を──!!」

「5歳児以下なの? ニーナ」


 僕はニーナにそう言って、ビル群より脱出する。


「うわぁあああああ!! これ着陸できるのかよ!?」

「ちょ、触んないで!! アーキー! マジで暴発する!!」


 女ザコどもの悲鳴を聞きながら、これをネタにしてこすればどれだけ良いかとか考えつつ、僕は空を駆け抜けていく。

 それから5分後。

 僕たちは、港のほうへと向かった。監視カメラがほとんど設置されておらず、警備員たちもここまでは追ってこない。距離にして10キロメートルくらいは飛び回った。


「はあ、はあ……」

「ラーキ、オマエ一生恨むからな……?」

「し、死ぬかと」


 そんな言葉を背に、僕はこの女ザコどもの処遇を決める羽目になった。

 そう、ここで始末して後腐れをなくすか、このまま利用させてもらうか。決断したら、二度と戻れない二者択一(にしゃたくいつ)の選択だ。


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