EP46 絶対的応報
ルキアが答える。『もう動けないんでしょう? 応援にジーターを呼んだわ。貴方の座標を割り出し次第、そちらへ向かわせる』
『あぁ、そうしてくれ。アウト』
通信が切られ、いよいよこの強盗劇もフィナーレに向かっているのを再確認した。
「よし……!!」
ここにいてもやることはない。更に、ここにいたら捕まる未来しかない。僕はレーダー管理室をあとにした。
*
「はぁ、はぁ……!!」
マルガレーテとロブスタとの闘いは、終わりを迎えていた。マルガレーテはすでに倒れ込み、呼吸するのに精一杯。だが、ロブスタも肩で呼吸している。それに、このマッチョな大男の精神状態はすでに、サイコ・キラーのそれに呑み込まれていた。
「オマエの負けだ、マルガレーテ……!!」
仰向けに倒れ込むマルガレーテへ向け、ロブスタはかろうじて立ったまま勝利宣言した。
「サイコ・キラー恐れてたら、〝正義〟守れねェんだよ! おらァ、あの世でアラビカに詫びろ!! このアバズレビッチが──」
「言葉使いが荒いですな。ランクAAAの正義の使者ともあろう者が」
ロブスタが振り返った先には、僕がいた。
「よりにもよって……、てめェが来やがったか」
ロブスタは僕を見つめ、そして笑う。その表情から、もはや正気さを感じ取ることはできない。
「ラーキ。に、げろ……。オマエじゃコイツは──」
「あァ?」
ロブスタはマルガレーテの頭を踏みつけた。何度も、何度も、念入りに。
「ふん、オマエの能力くらい分かってるんだぞ。エネルギー操作? そんなモン、所詮おれの〝ルール〟には勝てねェ」
確かに僕の能力を知り尽くしているだろう。エネルギーを生み出し、操り、放出したりバリアを張ったり、と。言ってしまえば、ただそれだけの能力だ。
「……、僕はゲーマーなんだよ。でもなぜか、この世界に来てから当然のルールを忘れていた」
「あァ?」
僕は右手を上げ、左手の甲をロブスタに向ける。
「ぶっ壊れた攻撃技には、必ずクールタイムがある。こんなこと、聞くまでもなかった」
刹那、
僕は周囲のエネルギーを吸収し始めた。文字通りすべてのエネルギーを。電気量、熱量、音量、光量、それらをすべて右手に集め、体表にまとわせて左手の甲へと移させる。
「て、てめェ──」
「オマエは能力を使うのに、3秒間必要だ。なら、その間に勝負をつければ良いんだよ……!!」
集めたエネルギーを一気に解き放つ。まるで小さな核爆発のような光が辺りを包み込む。
そう。ロブスタは最低でも3秒間なければ、能力が使えない。加えて、マルガレーテとの激戦で彼は削られまくっている。更に、僕が現れたから油断したのだろう。先ほど一瞬で倒したヤツに負けるわけないと、能力を使う素振りすら見せなかった。
「ぎゃぁあああ!!」
ロブスタの身体は消え去った。いくら全身を改造していようとも、これだけのエネルギーをくらえば、もう原型を保つことすらできない。
「……散々悪いことしてきた、因果応報だ」
もう振り返る必要はない。僕はあしたに向かって、歩き始めた。
サンダードーム空軍基地襲撃作戦。突貫工事で始まったこの大強盗も、なんとか生き残りに成功した。
重症者であるカルエ、情報処理班、ジーターに連れられてヤサへ帰っているアーキーとリミ、つまり僕とマルガレーテだけが地獄と化した軍基地から脱出するために、SUVに乗っていた。
そんな最中、僕の携帯電話にメッセージがつく。
『ラーキ・パケット。世界最強の能力者集団である〝グレード・セブン〟で自分を試さないか?』
それは紛れもなく、政府からの連絡だった。
チャプター2.5おしまいです。そろそろレビューほしいなぁ……。
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