EP40 強盗開始
カルエは車を発進させながら、目を細める。
「良く笑っていられるよ、ラーキ。やっぱり、オマエら、いやオマエはイレギュラーだ」
「イレギュラーでもトリックスターでもなんでも良いけど、この街に降りたときから決めていることがひとつあるだけさ」
「なんだ?」
「楽しまなきゃ、嘘だってね」
どうせ負けたら死ぬだけ。一度死を経験しているからこそ、僕の思考は刹那思考に傾いているのだろう。偏執的な存在ではないが、傍から見ればさほど違いはないのかもしれない。
カルエは電子タバコを吸い終える。「どうかしてるぜ、オマエ」
「どうかしていなきゃ、一生誰かの食い物だよ。この街ではね」僕は続ける。「食うか、食われるか。私たちは捕食者で居続けなければならない。それ以外に生き抜く術を知らないからね」
「そりゃそうだ。だけど、それ以外に生きられる術を教わりたかったよ。死を克服できない人類としては」
「大丈夫。死んでみるところから始めるのも、きっと悪くない」
「どうだかな……」カルエは切り返す。「結局、死んだら無価値だ。死ぬのが美徳って考えは、生きることに向き合えない連中の作った嘘だぞ。どんな生き恥さらしても、最後この地上に立っているヤツが勝ちなんだよ」
*
僕はカルエの運転で、軍車両を隠してある場所へたどり着いた。
「着替えよう」
「うん」
一応異性同士なので、少し離れた場所で着替える。これで、どこからどう見ても軍人だ。
「こちら後方侵入。あと数分程度で侵入できるぞ。オーバー」
『正面突破はすでにパーティーを始めてるわ。軍基地は大混乱に陥ってる。今のうちに応援部隊装って侵入してちょうだい』
「了解、アウト」
インカムでルキアの声を聞き、いよいよ前代未聞の強盗劇が近づいているのを身体が覚える。
「よっしゃ。行こうか」
「そだね」
軍用の車に乗り、僕らは空軍基地へと向かっていく。
『正面突破の混乱に乗って、お宝の所在割り出したよ~。ラーキ、カルエさん』
僕は返事する。「ニーナ、さっすが」
『でしょ? でね、お宝は地下にあるみたい。正面班が暴れまくれば、そこに配置されてる兵士も動かざるを得ないし、案外簡単に進むかも!』
「だってさ。カルエ」
「この手の強盗がうまく行った試しはない。冷静さを失うなよ」
釘を刺されたニーナに代わり、ルキアが答える。『分かってるわよ、それくらい。そっちの位置情報だって分かってるし、案の定軍人どももマルやジーターになぎ倒されてるわ。幸運を祈るわよ』
「ああ。つか、もう着くぞ。ICチップをかざせば良いのか?」
『門番もいない……わね。なら、ETCみたいに軍車両で入れば良いわ』
「おけい」
裏口からサンダードーム軍基地に入ろうとしたわけだが、そこに証明証を求めてくる者はいなかった。こうして、僕らはあっさり空軍基地へ入る。
「すげェことになってるな」
「ね」
基地は、壊滅的被害を受けていた。焼死体が至るところに転がっていて、射殺された者も数え切れないほど。正門のちょうど真逆から入ってこのありざまなので、正面は更に地獄と化しているだろう。
『カルエ、そこでストップ。あとは歩いて行って』
「この建物か? 白いな」
『えぇ。そこの地下よ。良い? どのみちバレるのは承知の上。いつギアや身体改造を使ったドンパチをするかは一任するわ』
「あぁ」
マルガレーテやジーター、アーキーとリミが暴れまくる戦場で、僕らは一度辺りを見渡して車から降りる。
警報音がけたたましく響く頃、白い建物の入口に立つ。が、さすがにロックされていた。
カルエが言う。「なぁ、ハッキングで解錠できないか?」
『1分だけちょうだい! 私がやってみる!』
「ニーナ、頼んだ」
『うん! ラーキ!!』
僕は辺りに目をやる。響き渡る警報に、勝るとも劣らない悲劇の鳴き声。すでに何人死んでいるのやら、と他人事のように考えていたら、




