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サイバーパンク2023-そのTSモブ兼女ザコは反射とエネルギー操作を操る-  作者: 東山ルイ
チャプター2 プルス・ウルトラ、さらなる高みへ

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EP26 パクス=アトミカ

「はーっ」


 僕はソファーにもたれ、ふと思う。

 そういえば、ニーナとアーキーはどうなったのだろうか、と。


「ねぇ、マルガレーテさん」

「なんだよ、ヒトが傷心に浸ってるのに」

「ニーナとアーキーの改造、もう終わったかな」

「あー、あのふたりか。手の改造なら、もう終わってんじゃね?」

「だったらもう呼び戻してよ。あまり改造し過ぎると、あの子たち正気度擦り減っちゃう」

「おーう」


 マルガレーテはおそらくジーターへ電話をかけ始めた。


「手の改造終わった? ああ、そうか。テレポートでこっちまで連れてきてくれや」


 短い通話を終わらせ、マルガレーテは酒瓶とグラスを持ちバルコニーに向かっていく。彼女はウィング・シティの夜景を見ながら、スコッチ・ウィスキーのロックをあおり始める。

 自分の世界に入り込んでしまったマルガレーテに変わり、カルエが僕に話しかけてくる。


「よう。マルに勝つとは、偉れェ戦力を手にしちまったな」

「正直、引き分けみたいなものだけどね」

「まぁな。そのデバイスの持続時間が短すぎるのと、アイツみてェな体力オバケには分が悪いことは分かった」

「そうだね。で、これからどうやってブラッドハウンズをぶっ潰すつもりなの?」

「良い質問だ。話すと長くなるが、良いか?」

「良いよ」


 カルエは僕と向き合う形で座った。


「要するに、ブラッドハウンズの反乱因子がマルの男に、自分らの犯罪を押し付けたんだよ。マルはその男、というかオマエらより年下なんだが、ともかくソイツを溺愛していてさ。自分の子どもみてェに可愛がってた」

「なるほど。それでマルガレーテさんが身代わり出頭したと」

「その通り。マルは捕まれば終身刑か死刑は免れない。だが、そのマルの男に着せられた罪も重たい。向こう10~20年出てこられねェくらいに。では、なぜマルはシャバにいると思う?」

「司法取引? どんな取引なのか知らないけど」

「少し特殊な司法取引だよ。いや、10ヶ月ほどの執行猶予といったほうが正しいか。その間にブラッドハウンズのブレーキがぶっ壊れたような勢力拡大を止めろ、と」

「ブラッドハウンズの勢力拡大……?」


「アイツら、核兵器を隠し持ってる」


「は?」


 核兵器? そんなもの、どうやってどこにどのように隠せる? 僕は目を細めた。


「ウィング・シティのどこかに核兵器がある。ミサイルなのか、砲弾なのかは分からない。それのスイッチを握っているのが、今のブラッドハウンズのボスだ」カルエは首を一回横に振った。「ウィング・シティどころか、州ごと吹き飛ばすほどの威力だろうな。連中はすでに、ウィング・シティのお偉方にその力をもって恫喝を始めてる。この街を本物の無法地帯にして、自分らは天下を握ろうとしてるわけだ」


 おおよそ嘘であってほしい話だが、カルエがそんなくだらない嘘をつくとは思えない。


「……、マルガレーテさんはあと何ヶ月シャバにいられるの? あのヒトだって不穏因子。当局が手柄なく手放すとは思えない」

「1ヶ月だ」


 隣に立って顔を蒼くしていたリミが、カルエの軽い笑みを交えた言葉に怯えたか、身体をガタガタ震わせる。


「9ヶ月間でも探せなかったの? 核兵器は」

「あと少しのところまで来てる。だが、さっき言ったように虱潰しなのは否めん。それに、この仕事はマルなしじゃ無理だ。当局も援軍をよこさねェしさ」

「……、普通よこしそうなものだけど」

「FBIもCIAへもブラッドハウンズのスパイが潜り込んでる。当然、軍にも。馬鹿げてると思うだろう? おれもそう思うぜ。ただの裏組織が、合衆国の獅子身中の虫になっちまってるんだからな」


 あり得ない話……とも断言できない。この世界での合衆国、基アメリカは大幅に弱体化している。他国に超大国の地位を奪われつつある、没落国家扱いなのだ。

 それに、没落国家という事実は、ウィング・シティのような街が存在する時点で裏打ちされてしまう。


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