EP23 ランクAAA(トリプルエー)マルガレーテ・アクス
彼女たちは乱造されただろう、女ザコ。そのためか、髪型は違うけれど同じ金髪。顔もあまり見分けがつかない。イギリス人とフランス人との見分けがつくか、あるいは日本人と韓国人の違いが分かるか、という話になる。
まぁ、たいていのヒトはつかない。なら、せめて髪色だけでも区別させたいのである。
それに、僕のゲーム知識、そしてこの世界の条理が正しければ……。
「なーに、簡単な身体改造してギアを装着するだけだよ。そうすりゃ、髪色も変わる。オマエら、ランクBくらいの正気度はあるだろ?」
そう、マルガレーテが言ったように、ウィング・シティでは身体改造及びギアを装着すると、髪色が変化する。つけるギアの種類にもよるが、赤・青・黄・ピンク・緑・銀・金・黒……といった具合に変わるのである。
実際、マルガレーテはオレンジがかった髪色だし、カルエは銀髪。僕は外部装置に頼っているので髪色は変わっていないが、それは彼女たちの髪色を変えてしまえば没個性にはならない。
「え、え? ラーキ、どういう意味?」
「そのままの意味だよ、ニーナ。ギアを装着した者は、髪色が変化することがある。私は変化していないし、リミも同様だけど、私は外部装置に頼っているからだし、リミはまぁ、そのうち変わるかもね。だから、身体改造して個性を出しなよ」
「そんなん、初めて知ったぞ」
「ね。んじゃ、うちはそのうち髪色が変わる可能性があると」
「というわけで、マルガレーテさん。なにか使っていないギア持っている?」
マルガレーテはスーツケースを机の下から取り出した。
「あたしはブラッドハウンズのボスだぞ。ギアなんていくらでも持ってるさ。重要なのは与えられねぇけど、ランクB程度の正気度を持つヤツへ渡せるものなら、ざっと10個以上ある」
「身体改造は?」
「あぁ、ソイツはあたしの部下にやらせる。タトゥーを入れるようなモンだ。おーい」
その瞬間、
巨漢が現れた。黒い髪の翠眼だ。僕らやカルエが見上げるほどの背丈の高さと、醸し出される正気度の高さ。そんな彼の名前は、
「なんの用ですか、ボス」
「ジーター、身体改造のオペにかかれ。そこにいる金髪どもだ」
「御意」
ジーターである。ドスの効いた声も特徴的だ。
そんなジーターは、即座に僕らの背後に回った。3人が驚いた様子になる中、彼はまずアーキーとニーナの肩に触れた。そのときには、彼女たちはどこかへ消えたのだった。
「テレポート?」
「そんなところだな。おれはジーター。といっても、さっきボスがおれを呼んだから分かるか。ブラッドハウンズの正当なNo.2だ」
「なるほど、よろしく」
僕は手を差し出し、握手の合図を送る。ジーターは戦かない僕を見てやや面食らっていたのか、しばし固まっていたが、やがて握手に応じた。
「よし、おれは行ってくる。およそ30分あれば、身体改造は終わるからな」
「それは当人たちに教えてあげて。あの子ら、ビビリだからさ」
「分かった」
そうしてジーターはテレポートで去っていった。場には僕とリミ、カルエとマルガレーテ、ルキアが残される。
「さて、カルエ。コイツらは本当に使えるのか?」
「使えるか知りてェなら、試しに模擬戦してみろよ」
「おう、悪くない提案だな。おい。そこのラーキ、だっけ? 少し模擬戦しねぇか?」
「良いよ」
「いやいや、良いの!?」
声を荒げたのは、リミだった。彼女は物怖じしていたようだが、どうもその感情も吹き飛んでしまったようだ。彼女は続ける。
「マルガレーテ・アクスって言ったら、うちでも知ってる超大物だよ!? ランクAAAはこの街の上位1パーセント!! 身体の至るところを改造してて、使う能力も多い! 敵うと思ってるの!?」
僕はニヤリと笑い、リミの目をしっかり見据え、
「随分知っているね、ファンなの?」
あえてずれたことを口走る。




