EP22 ルンルン以上ハッピー以下
低身長、金髪で碧い目をしている美人さんのルキアが現れた。僕らより身長もバストも小さいが、凛とした態度が美しさを増長させている。
「ああ、よろしく」
途端に隣へアーキーがよってきた。彼女は小声で、
「(なぁ、こんなガキみてぇなヤツが案内人? カルエ・キャベンディッシュはロリコンなのか?)」
ある種当然の疑問をぶつけてくる。原作通りなら、彼女はカルエに拾われた孤児。だからカルエに着いていって
いる……という設定だが、いかんせんどこまで原作のまま進んでいるか分からないので、
「さぁ」
とだけ答える。
「どうしたの? そこの高身長さん」
「あ、いや。なんでもねぇ」
「そう」どこか棒読み気味にルキアは言う。「カルエとVIPは最上階で待ってるわ。貴方たちみたいなブラッドハウンズの下っ端を雇わないとならないなんて、私たちも落ちぶれたものね」
「おい、そんな言い方はねぇだろう。クソガキ」
「やめろよ、アーキー。こんなところで喧嘩しても仕方ない」僕が静める。「ともかく、早く行こう。いつ狙撃されるか分かったものじゃないしね」
僕はデバイスの電源を切ってしまえば、ただの女ザコ。狙撃なんてされようものなら、一瞬でお陀仏である。だから、万が一に備えて早く部屋の中に入りたい。
「随分警戒心が高いのね。まぁ良いわ。カルエも貴方たちで間違いないと言ってたし、行きましょう」
どこからともなく防犯カメラをハッキングしたか、それともなければルキアの能力か。考えてみれば、ルキアは能力者なのか? 原作ゲームでもその詳細は明らかになっていない。
そんな疑念ばかり抱え、僕らはゴールデンビルの中に入りエレベーターで最上階まで昇っていく。
「なぁ、ルキア」僕が口を開く。
「なにかしら?」
「ここまで来て隠し事しても仕方ないでしょ? VIPは誰なのさ」
「そうね……、結論から言うわ。マルガレーテ・アクスよ、VIPは」
「なるほど」
僕はそう答えるが、他の3人は絶句していた。構わず僕は続ける。
「アクス氏はブラッドハウンズから追い出されたの? ほら、カルエがブラッドハウンズを襲ったってことは、すなわち現体制のアイツらを潰したいからでしょ」
「そうなるわね」
「理由は?」
「それは当人に訊いてちょうだい。といっても、私からしたらしょうもない理由だけど」
ルキアは溜め息混じりだった。
なんとなく予想がついてしまうのは、気の所為だろうか。
と思っている間に、最上階へたどり着いた。部屋はひとつだけ、というかエレベーターが開いた瞬間よりバルコニーと小洒落た部屋が広がっていた。
「連れてきたわ。カルエ、マル」
カルエの顔は先ほど見た。声と口調とは裏腹に、結構可愛い顔をしている。
だが、この世界でのマルガレーテとの面会は初めてだ。
オレンジ色の髪はウェーブがかかっていて、ツリ目の美人。ナイススタイルだが、身体中に身体改造が施されているのは間違いない。
そんな背丈も高いマルガレーテは、開口一番、
「よう、調子は?」
フランクに話しかけてきた。
僕はそれに答える。他の3人が全く役に立たなさそうだからだ。
「ルンルン以上ハッピー以下かな。そちらは?」
「下水道にでも落っこちた気分だよ。なぁ、カルエ」
「マル、コイツらは相当やるぞ? 見た目はそこらへんにいるザコだが」
「そうだ、見た目だよ。コイツらには個性というものがない。ほら、ラーキとかいう根性ありそうな女の背後にいるヤツら、こっち来い。髪染めしてやる」
「え」3人は硬直する。
僕は3人の肩を叩き、マルガレーテのもとへ向かわせる。「私もそう思っていたんだよ。私らの見た目には個性がない。見た目から変えていこうよ」




