EP17 グランド・セフト・オート
そうして女性の性感帯の強さに驚嘆し、僕は彼女たちが起きてくるのを待つ。
「おはよー」
まず起きてきたのは、ニーナだった。彼女は大あくびしながら、洗面所へと向かっていく。
「あー、眠りたりねぇー」
それと同時にアーキーも起床した。彼女もまた、注ぎ込まれているかのように洗面台へ行く。
「まだ眠剤切れてないけど、おはよう」
少し遅れてリミが現れた。彼女は飯を食べてから歯磨きする派なのか、冷蔵庫からチキンを取り出して食べ始めた。随分健啖家である。
それより10分後、ついに3人の女ザコがリビングルームへ集まった。各々ソファーに座り、テレビをつけてそれを眺めていたり、スマホをいじっていたりしていた。
「みんな、今から……そうだな。1時間後にブラッドハウンズの武器取引を襲うよ」
ニーナとアーキーはギョッとした顔になった。当然ではある。彼女たちにはまだ、なにも知らせていないからだ。
「ちょっと待て、ラーキ。オマエ今なんて言った?」
「ブラッドハウンズの武器を奪う、って言ったけど」
「いやいやいや!? 無理に決まってるだろ!? 何人能力者がいると思ってんだよ!?」
「何人でも良いんじゃない? どうせ、私のエネルギー操作の前じゃ有象無象だよ」僕はフロンティアの女幹部から奪ったギアを取り出す。「それに、ギアもひとつある。身体改造しなきゃ使えないけどね。けど、アーキーとリミはブラッドハウンズに3年くらいいたんでしょ? どこか改造していない?」
「私、改造してるよ」リミが手を上げた。「といっても、腕周りだけだけどね。一般人なら楽チンに撲殺できる程度の威力はある」
「なら、ニーナ。申し訳ないけど、リミへこれあげちゃって良い?」
「別に構わないけど……、ホントに私たちの正気度って上がってるの?」
「上がっていなければ、私が始末するだけさ」
サラッとそう言い放ったからか、ニーナとアーキーの顔が強張った。
「でも、信じてよ。今まで私の指示で全部うまく行っていたしさ。ねぇ、リミ」
「うん」
「おいおい、リミ。本気か──」
その頃には、まるで携帯ゲーム機のカードリッジ交換器具のようなそれに、リミはギアを入れていた。
「……、ん」
「大丈夫?」
「大丈夫。ちょっと幻覚剤飲んだみたいな気分になったけど」
「どんな能力か分かる?」
「うーん……、身体能力強化かな」
「やっぱりか」
あの女幹部は、明らかに人間の硬度を超えていた。なら、そのギアは身体強化だと見込んでいたから、あまり驚きはない。
「んじゃ、能力を持っている私とリミが中心になってブラッドハウンズを襲う。ふたりはあらかた片付け追えたあと、武器奪って参戦して」
「場所、分かるのかよ」
「レイ・ウォーカーが住所を送ってきた。廃工場みたいだ」
「オマエ、本当に動きが早いよな……」
「どうも。んじゃ、行こうか。ああ、みんなの分のパーカー買ったから、それ被ってね」
「黒いパーカー? まぁ良いけどよぉ」
「車は適当に盗もう。ピッキングが得意なヒト、いる?」
「私、得意だよ」ニーナがそう言う。
「なら、少し歩いてセダンでもパクろう」
「了解!」
「ニーナはそれで良いのかよ? リミは能力を持ってるから、まだ分からんでもないけどさ」
「だって、ラーキが指示出ししてくれるんだよ? なら絶対大丈夫でしょ!」
目を細めるアーキーをよそに、僕らは玄関へと向かっていく。このままだと置いてきぼりなので、アーキーも渋々といった感じでついてくるのだった。
僕らは外に出て、早速裏路地へと向かう。
「これなんか良いんじゃない?」
「近くに防犯カメラもないしね~」
僕とニーナは、新車でも買うような感覚で話す。といっても、今からやることは窃盗だが。
ニーナはシルバーのセダンの鍵穴になにかを差し込む。そして、警報音が鳴ることもなく車のドアが開いた。




