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サイバーパンク2023-そのTSモブ兼女ザコは反射とエネルギー操作を操る-  作者: 東山ルイ
チャプター2 プルス・ウルトラ、さらなる高みへ

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EP16 変わらないものと変わりゆく世界

 僕はコーヒーを飲み切り、さり気なく渡されていたレイ・ウォーカーの連絡先へ電話をかける。


「誰と電話するの──」

「しーっ」


 僕は人差し指を口元に当てて、リミを静止する。そしてスピーカーフォンにして、


「やぁ、早起きは得だよね」

『もう昼間だが』

「私が早起きだと言ったら、それは早起きなんだよ。とまぁ、そんなことはどうでも良い。手頃に襲える宝石店か銀行、知らない?」

『グリズリー地区なら、ジェムという宝石店が良いだろうな』

「警備員の数は?」

『身体張ってまで金持ちを守る気はないと思われる。銃で脅かせば、そのまま伏せてくれるさ』

「なるほど。けど、銃は追跡できないもののほうが良いよね?」

『そうだろうな。ブラッドハウンズのシマで、ヤツらは友好組織と銃器取引をするようだ』

「へぇ。ところで、分け前はいくらほしい?」

『20パーセントだな』

「了解。もちろん、これは仮定の話だよね」

『当たり前だ。強盗なんて恐れ多いこと、一般市民にはできないよ』

「分かった。んじゃ、また今度話そう」

『ああ』


 僕は電話を切る。傍らには、口をあんぐり開けるリミがいた。


「え、私ら強盗するの?」

「そりゃあ、資金が必要だからね」

「でも、ブラッドハウンズの武器を強奪するんでしょ? またアイツらと対峙するの?」

「ああ、そうだね」

「……、今から睡眠薬もらってくる。眠らないと、一生悪夢から抜け出せなさそう」

「私も行くよ」


 *


 さすが緩衝地帯といったところか。街並みは比較的平和だし、警察機関も機能しているほうだった。僕とリミは睡眠薬とみんなの分の服を買って、隠れ家へと戻っていく。


「黒いパーカー?」

「赤いのを着ていたら、ブラッドハウンズだと勘違いされるでしょ」僕は日差しに目をくらませ、頭をクラクラさせていた。「まぁ、元の服も大事になってくる。洗濯しておこうか。きょうの気候だったら、すぐに乾くさ。ああでも、一応部屋干しにしておこう。見られたら面倒だしね」


 というわけで、僕らは家へ帰ってきた。

 未だふたりは眠っている。仕方ない。夜通し拡張世界で特訓していたのだから。


「リミ、眠剤飲んで眠りなよ」

「うん……」

「どうしたのさ、浮かない顔して。疲れているから?」

「そりゃあ、ブラッドハウンズを襲ったあと返す刀で宝石店強盗することになれば、浮かない顔にもなるよ」

「じゃあ、眠りなよ。眠れば少しすっきりするさ」


 僕は淡々とそう答えた。もはやこれが決定事項であり、変えるつもりはないと言わんばかりに。


「まぁ、このままじゃジリ貧だしね……」

「でしょ?」


 リミはミネラルウォーターで眠剤を飲み、少しソファーにもたれた。


「すぐ効かないんだ」

「まぁね。だいたい10分したら眠くなるけど」

「まぁ、作戦開始はみんなが起きてから6時間後くらいにしよう。そうすれば、眠剤の効果も切れているでしょ?」

「うん……」


 半ば無理やり、リミを納得させた僕は、朝飯代わりのシリアルを牛乳もかけずにポリポリ食べる。


「うまい」

「ねぇ、ラーキ」

「なにさ」

「貴方、想像以上に想像以上だね。貴方がなにか、神様か何者からか教示を得たのか知らないけど、今まで無茶ばかり起こしてきたのに万事うまく行ってるし」


 僕は薄く、鼻で笑う。


「それで得しているのは、誰でもない君らだからね~。感謝してよ? あのまま突撃していたら、みんな死んでいたんだから」

「……うん!」


 リミは、柔らかい笑みを見せた。


「あ、睡眠薬効いてきた。疲れてたからかな」

「んじゃ、もう寝ちゃいなさい」

「分かった。おやすみ」

「おやすみ~」


 こうして、リビングから誰もいなくなった。

 僕は3人の女ザコ、さらに交戦した幹部たちの苦しむ表情を脳裏に浮かべる。そして、デニムを下ろすのだった。そう、僕の中身は結局変わっていないのだ。


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