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英雄を継ぐ  作者: pink18
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十六話

 

 朝日実業高校、サッカー部監督。

 大間おおま ひとし。プロジェクトG──観測班。


 二年前に、遺伝子保持者である横山従吾とともに赴任してきた。そして去年、地区予選を制し、全国大会出場を成し遂げた。今年は県大会連覇がかかる。

 一見、華やかにみえる経歴も大間は頭を抱えていた。

 遺伝子保持者との関わり方。監督経験豊富な大間から見ても彼らの能力は突出している。天才と呼んでも過言ではない。

 数々の名門校を渡り歩き、プロ選手の輩出にも立ち会ってきた大間だからこそ、彼らの才能が非凡ではないことを重々(じゅうじゅう)に理解していた。

 しかし、天才がゆえに、凡人には扱えないところがある。


 ──優駿高校、喜多島監督、同じ観測者として、拝見させて頂きますよ。あなたがどうやって彼らを見守っているのかを……。


 

「ほっほっほ。それでは早速、朝日実業対策の練習といきましょうかね?」

 ──朝日実業対策!?

 全員が喜多島に注目する。


「去年の朝日実業はゾーンプレスをもちいた守備的なチームでした。それにエースストライカー横山君のオフェンス力。三年生が抜けた今年も、恐らく同じようなチームに仕上げてくるでしょう」

 上級生たちが朝日実業の洗練されたゾーンプレスを思い出して奥歯を噛み締める。


「朝日実業の監督、大間先生は喜多島先生と同じ、数々の名門高校を率いてきた監督なのよ。お互いに手の内は知り尽くしているわ」

 かなえが一年生たちに告げた。


「ほっほっほ。大間監督。彼のディフェンス指導はあなどれませんよ。そこで──」

 喜多島の鼻の穴が大きく開く。

「高さを活かしたポストプレイの練習をします」

 ──ポストプレイ?

「うちの新戦力としての強みは、堅太郎君の高さと強さです」

 ──えっ!? 俺っすか!?

 喜多島からの指名に堅太郎が目を輝かせた。


「がはははっ。さすがは監督っ! 見る目があるぜっ! 聞いたか? 凡人どもっ!」

「しかし、監督、堅太郎はサッカー未経験者で、まだルールも良く分かってないヤツでして……」

 キャプテンの川田が喜多島の提案に不安を覚えた。

「だあー、キャプテン、なにをおっしゃるんですかっ!? サブちゃん、こんなヤツの言うことは聞かない方がいいですぜっ!」


 ──サブちゃん!?


 そう言って堅太郎は不躾ぶしつけな態度で喜多島の肩に手を回した。


「こらこら、堅太郎君っ! 監督になんてことするのっ!」

 かなえが慌てて、堅太郎を喜多島から引き剥がす。

「ほっほっほ。堅太郎君はうちのチームに制空権をもたらす存在。彼を使わない手はありませんよ」


「聞いたかっ!? 凡人どもっ! 俺は制空権をもたらす存在っ! この俺を使わない手はなあーーいっ! ガハハハッ!」


 勇ましく声をあげる堅太郎だったが、──ところで、

 ──制空権ってなに?


 喜多島の意図をまったく持って理解していなかった。

「制空権っていうのは空中戦を制するってことよ」

 かなえが補足する。


「フムフム。なるほどなるほど。つまり、高いパスを俺の頭で落として、味方チームにパスを出す。これが高さを活かしたポストプレイってわけですな!」


「その通りです。それなら鍛え上げられた朝日実業のゾーンプレスも攻略できます」

 喜多島が得意げに鼻息を噴射させた。


「しかし、そんな器用な芸当がコイツにできますかね?」

 川田の表情が曇る。

「何事も練習あるのみです」

「だあーはっはっはっ! キャプテンなにを弱気な発言を! このサッカー部の英雄、有馬堅太郎を信じなさいっ!」


 そう意気込む堅太郎だったが──、

 

 ずこーん。

 ばこーん。

 どこーん。

 

 ──あれっ!?

 

 力任せのヘディングは狙いが定まらず、四方八方へと飛び散った。

 一週間後に行われた朝日実業との練習試合。堅太郎はベンチでのスタートになった──。



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