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虫なんて食べません!〜異世界メシマズ昆虫食村顛末記〜  作者: 地野千塩


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第32話 OMOTENASHI☆

 村長のやり直し誕生パーティーの日、涼子は朝から準備に追われていた。


 部屋の飾り付けは終わり、ダイニングテーブルの上には花が飾られている。折り紙やマスキングテープ、シールなどで作った安っぽい飾りだが、子供のお誕生日パーティーのような楽しい雰囲気だ。


 ジョンは残念ながら、仕事が入り村の貧困地区へでかけていた。その代わりイナゴの佃煮と芋虫のタコスを作っておいておいてくれた。村長が昆虫食ガチ勢の可能性もあり、一応それも用意しておく事にした。


 アランは午後から仕事が休みなので、帰りに村長の家により、一緒に合流してくる事になった。アランはやり直し誕生パーティーを村長より楽しみにしていて、料理も色々リクエストされた。ジャンキーで身体に悪そうだが、とっても美味しいものを食べたいという事ので、キッチンでフィライドチキンを揚げていた。


「キャン!」


 モコがキッチンにやってきて、油が跳ねる音に驚いていた。


「モコ、今は油の作業中だから、リビングの方へ行ってね」

「キャン!」


 モコは素直に従い、リビングの方に向かった。心なしかモコも誕生パーティーを楽しみにしているようだ。首輪もリボンの飾りのついたものに変え、少しオシャレにしてやったら、上機嫌に鳴いていた。


 今作ってるフライドチキンは、元いた日本でも好評のものだった。兄の太一によれば、某ファーストフードと同じ味らしい。涼子はその味を再現するべく、半年以上スパイスを配合しながら試作品をつくっていた事を思い出す。ようやく某ファーストフード店のチキンと同じ味になった時の達成感は忘れられない。やっぱり、試行錯誤と努力して何かを達成するのは、悪い事に思えない。この異世界が日本の悪い所を煮詰めたような場所で、かえって良かった気もする。もし、何でも自分の想い通りになるチートな世界だったら、退屈すぎて死にそうだ。


 フライドチキンを作り終えたら、今度はフレンチフライも作る。ジャガイモを荒い、皮を剥いで、味付けしてあげるだけだ。しかし、思ったよりジャガイモを買い過ぎてしまったようで、急遽ポテトサラダも作る事にした。家庭料理はこんな風に突破的な事もおき、なかなか計画通りに行かない。そんな時、いかに機転をきかせるのが大事だ。食材の管理も料理の一つ。ただ作っていれば良いという問題ではない。


 ポテトサラダも自分で作ると、面倒くさい料理の割に食べるのは一瞬。その上、メインにもならない。マヨネーズもたっぷり入れるので、ヘルシーでもない。手間だけがかかる。いくら料理好きでもポテトサラダは、心が折れるので、滅多に作らないが、今日は村長のお誕生パーティーだし、少し手間をかけても良いだろう。確かにコスパの悪い料理だが、手作りすると市販の惣菜より美味しい。たぶんジャガイモを潰し過ぎないので、食感も良いからだろう。それに手間をかけた分、美味しく感じるのかもしれない。コスパは悪いが市販の惣菜では味わえない何かはあった。


 最後にケーキも焼いた。スポンジケーキを焼いてクリームと重ねただけだ。残念ながら、ケーキのレシピは記憶していなかったので、サミーおばあちゃんの家族の秘伝レシピを参考にさせてもらう。バタークリームのケーキで、作った事のないものだったが、見た目はなかなか良い。最後にチョコペンで「村長お誕生日おめでとう!」とコオロギのコオちゃんのイラストを書いてみた。コオロギ料理は食べたくはないが、コオちゃんのキャラクターデザインは可愛らしいものだ。一体誰が考えたんだろう。ご当地キャラの割には、サンリオのキャラクターのような可愛いらしさがある。もし日本にあっても「可愛い!」と受けそうな感じもする。


 こうしてダイニングテーブルの上に、フライドチキン、フレンチフライ、ポテトサラダ、ケーキ、芋虫のタコスとイナゴの佃煮を並べた。芋虫のタコスとイナゴに佃煮の見た目は、明らか浮いていたがもう慣れた。グリラス料理長が作ったものの数々を思い出すと、芋虫のタコスもイナゴの佃煮もマイルドな見た目だ。それに家畜小屋やドブ川の匂いがしないのもありがたい。


「キャン! キャン!」


 モコはいつもと違って華やかなダイニングテーブルを見ると、興奮して走りまわっていた。モコには何が始まるのか分かってはいないだろうが、何かが始まる予感を感じ取っているのだろう。


「モコ、楽しみだね!」


 涼子はモコの毛並みを場でながら、アランと村長がやって来るのを待つ。


 今だに日本に帰る方法も、この世界の謎も分かっていないが、料理ができるのは幸せだ。昆虫食をやめさせて日本食を広めたい意図などは全くなかったが、村長には美味しいものを食べて見て欲しいと思う。


 これが日本人のおもてなし力というものだろうか。やっぱり自分は、日本人の遺伝子が濃いのかも知れないと思ってしまう。


「涼子、来たよ!」


 ちょうど準備を終えた後、アランが帰ってきた。その後には村長もいる。


「村長! ようこそいらっしゃいました!」


 笑顔で村長を出迎えた。日本人のおもてなし力を村長に見せたい。どうか楽しんで欲しいと願っていた。

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