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虫なんて食べません!〜異世界メシマズ昆虫食村顛末記〜  作者: 地野千塩


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第20話 昆虫料理コンテストに出てみたい

 気づくと夕方になっていた。サミーおばあちゃんの家の片付けを手伝ったり、夕飯を作ったろしていた。夕飯は、サミーおばあちゃんから日本食が良いとリクエストされ、塩結びを作ってみた。これがイナゴの佃煮によくあうと大絶賛だった。イナゴの佃煮は、確かに見た目はグロテクスだが、少しは慣れてきた。


 確かに小魚の佃煮の方が美味しいが、今は戦時中だと思えば「まあ、食べられない事もないかな?」と思うようになった。もっともコオロギやゴキブリ は清潔感のない場所にいるイメージがあり、どうしても食べたくないが。


 こうして森のアランの家に帰ると、日が暮れていた。オレンジ色の太陽が沈んでいく。


 そういえば異世界にも太陽があるのが、不思議に思えてきた。ここは宇宙である事は間違いないようだが、この土地から見える太陽は地球で見えるものとそっくりだった。太陽だけでなく、夜には月や星も見えた。月に至っては満月だった。


 どうも異世界というよりは、地球の未開の土地に来ているような気分だった。そういえば、クラスメイトにはクリスチャンの友達がいたが、地球や宇宙にあるものは全部、全能の神が創造したとか言っていた。その説が正しいのなら、この場所って何?


 どこかの宇宙にある異世界だと思い込んでいたが、涼子はよくわからなくなってきた。


「って事なんだんだけど、この世界って何なの? 太陽とか、月とか、どういう設定なの?」


 涼子はジョンに質問していた。ジョンは今日は仕事が早く終わったので、一階のリビングで腹筋をしていた。今日はジャージ姿で、野良っぽさは半減していた。


 暑いのでリビングは扇風機をかけているが、あまり涼しくならない。この土地ではエアコンはあるが、気温が温暖化するという理由で深夜にしか付けられない法律があった。国をあげてエコをやっているようで、スーパーのレジ袋が有料になった日本と被る。どうも異世界と言っても日本の嫌なところはそっくりそのまま移植されているよう。本当にここは異世界?


 涼子はモコを膝の上に置き、ジョンの筋トレの様子を見ていた。ワンセット終わるまでは、涼子の話は無視していた。


 仕方がないので、モコの背を撫でてみた。その名前のとおり、モコモコの毛並みだ。涼子に触られるのを暑がり、扇風機の前に居座り、キャンと鳴いていた。涼しそうに目を細めている。見た目は犬そっくりだが、表情は人間っぽい。ちなみにモコはあまり食事をとらなくても生きられる生物のようで、主食は雑草。トイレも外で自分でやってる。やっぱ現代日本にある犬とは違い、異世界の動物だと感じてしまうが。


「涼子は、そこに気づいたか」


 筋トレを終えたジョンは起き上がり、モコの隣に座った。扇風機の風をうけ、ジョンの額の汗が乾いていた。


「そうだよ。どういう事なの? この世界には、宇宙があるの? 宇宙にあるどこかの星の設定?」

「まあ、そうだな。まあ、宇宙なんてファンタジーさ。人の頭の中で作った世界だよ」

「意味がわからない」


 涼子はただただ、首を傾げるしかできない。学校の教科書に宇宙があると書かれていて、惑星も名前なども覚えてさせられた。確か月面着陸の映像も学校で見たことがあるが、それが「無い」ものだとは信じがたい。


「この世界は……」


 ジョンはここで口ごもり、言葉を切った。


「地球という場所ではない」

「それはわかったよ。だったら何で太陽や月が、地球と同じように見えるの? 太陽はともかく月が満月に見えるは、おかしくない?」


 涼子は身を乗り出し、ジョンの問い詰めてしまった。自分だって化学や理系の事はわからない。ただ、ここが宇宙のどこかの星だとしたら、満月が見えるのがおかしい。あと、空があり、風もあり、大地もある。木もあり、森もあり、川もある。どうも地球をお手本にしてるというか劣化コピーのような印象だった。しかも現代日本の悪いところを煮詰めたような所もある。


「涼子、人には知らなくて良い事があるんだよ」

「どういう事?」

「現実が辛い人間は、どこか別の場所が必要って事さ」


 カッコつけたような口調のジョンにちょっとイライラとしてくる。ただ、その気持ちは少しわかる気もする。兄の太一なんてそのタイプだ。現実はモテず、全く女子に相手にされない。そんな太一は、アニメやゲームの世界が癒しだったのだろう。それを仕事にするほどだ。


「もしかしてここってゲームや漫画の世界だったりする?」


 ふと、そう思うと腑に落ちる。異世界もののライトノベルでは、転生ものも人気だった。転生先は乙女ゲームや漫画世界、名作の世界だったりする。この世界に行く前も、テレビ画面を見ていた記憶もある。宇宙のどこかの惑星ではなく、人が創った物語の世界にいると思えば、矛盾点はだいぶ減ってきた。そう思うと、帰る方法も全くわからまくなってきて、怖くもなってくる。同時にホームシックというか、元いた世界が恋しくてたまらない気分にもなってきた。


「まあ、今はそんなに考えすぎるなよ。実は、村でこんなお祭りがあるんだが、参加してみないか?」

「何これ」


 ジョンはジャージのポケットから、一枚のチラシを取り出した。そこには、「クリケット村感謝祭」とある。数日後、この村の公園でお祭りが開かれるらしい。聖女の歌のパフォーマンスや昆虫食の屋台が出るとも書いてあった。あとは、昆虫食コンテストが開かれるらしい。当日、スペシャルな昆虫食をもちより、村長とボード家のご主人が審査する。大賞は、日本円にして5万円の賞金が出るという。


「実は俺もこのコンテストに参加しようと思ってな、涼子も出てみるか?」

「でも昆虫食なんて作れないよ」


 賞金は興味があるが、昆虫料理コンテストは全く興味は持てない。たぶん、こういったお祭りをしながら、村人に昆虫食を根付かせていたのだろう。なかなか小賢しい。お祭りの主催者とスポンサーはボード家の昆虫ファームとあった。あのご主人はなかなか頭が良さそうだった。


「でも賞金出るぜ? 俺は芋虫のタコスでも作って応募したいな」

「えー、まずそう」

「そんな事言うなら、涼子も参加しろよ。事前に名前書くだけで応募できるってよ。優勝したら賞金だけじゃくて、金のコオロギ像もくれるらしい。これは純金だってよ」


 そう言われると、昆虫食コンテストにも興味が出てきた。やっぱり私は日本人のようだ。お祭りとか言われると弱い。


「わかった。応募したいよ」

「オッケー! 明日俺がボード家に涼子の名前出しておくよ」


 この世界のついて考えると、謎が深まってくるし、不安も出てくる。でも、昆虫食とはいえ、料理の事を考えていれば少しは気が紛れそうだった。


「ただいまー」


 ちょうどアランも仕事から帰ってきた。


「え? 涼子は昆虫料理コンテストに出るんだ……。あれは結構ガチで挑む人がいるから、難しいよ」


 アランは心配していたが、そう言われると益々やる気が出てきた。昆虫料理コンテストに出るなんて、弱いものが強いものに立ち向かう「蟷螂の斧」と言う言葉のようなものかもしれない。それでも、希望が戻ってきたような感覚を覚えた。

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