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虫なんて食べません!〜異世界メシマズ昆虫食村顛末記〜  作者: 地野千塩


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第10話 可愛い子と残念イケメン

 前にアシュリーとこの森に来た時は、アランという人の家があったはずだ。とりあえずアランの家も探してみようと思ったが、森の中で迷ってしまった。自業自得とはいえ、セミの抜け殻やアリ、ミミズなど虫が足元に転がっていると嫌悪感しか持てない。一体この虫達をどういう発想で食べようと思ったのか。涼子は全く想像ができない。


 しばらく森を歩き回ると、果実らしき実をつけている低木を見つけらた。


 日本では見た事のない果実だった。


 茶色く硬い皮に覆われているが、それを剥くと白い果実が現れた。甘い、ミルクのような香りもする。


 日本で見たことは無いものだが、この果実は、食べたくなってしまった。


 キョロキョロと周りを窺った後、果実の皮を完全に剥がしてみた。


 サイズは蜜柑より少し小さなサイズだったが、匂いは完全にミルク。お腹を壊すリスクも頭に浮かぶ。しかし、ゴキブリピザ、蟻のサラダ、コオロギのフリッターよりはマシだと思った。昆虫を食べて死んだら、末代まで呪ってやりたくなるが、この木の実に関しては、例え死んでも後悔はなさそうだった。何より喉が渇いているし、お腹も減っている。森の中は涼しいとはいえ、この日差しの強さや蒸し暑さは、体力をごっそりと奪っていた。涼子は筋肉モリモリで鍛えていたわけだが、運動不足の人がこの場にいたら死ぬかもしれない。


「いただききます!」


 思い切って果実を口の中に入れてみた。繊維などはあまりない。ゼリーのような食感で、味はミルクだった。ただのミルクというよりは、砂糖入りのミルクだ。シュトーレンにかかってる粉砂糖のような甘みを感じる。


 食べてから数分、自分の身体を観察していたが、特に問題無さそうだった。アレルギー反応のようなものもなく、お腹も痛くない。


「わーい、これは美味しい!」


 その場に座り、この果実を食べていた。明らかにに日本には無い果実だが、安心しきっていくつも低木から果実をもぎ、食べていた。


 もしかしたら遅延性のアレルギーでも発症しそうな不安もあったが、この果実のおいしさに負けた。初めて納豆やフグを食べた人はこんな気分だったのかもしれない。少しに勇気さえあれば、何でも食べられる気もする。


 同時にアシュリーやルースへの態度は酷かったと反省してしまう。お腹も膨れて冷静さを取り戻してきたのかもしれない。


 もしかしたら深刻な食糧不足などの事情もあり、昆虫を食べられるようになったのかも。アシュリーやルースが精神疾患という説も捨てきれない。そう思うと、自分はなんて事をしてしまったんだろうと思う。


 涼子はアシュリーとの会話を思い出しながら、この土地の食糧事情を思い出し、地面に書き出すてみた。


 ・農作物が気候のせいで取れない?

 ・果実は余ってる。果実農家は廃業に追い込まれていた。

 ・米、小麦などの主食があるかは謎。

 ・ゴキブリピザを見るからに砂糖、塩、スパイスなどの調味料はあるっぽい。

 ・野菜は高い? 輸入頼り? ただ蟻のサラダにはレタスなどの青菜は使われれいたので、完全に入手不可では無いようだ。問題はどこで手に入れるのか?

 ・肉、魚、牛乳、卵などのタンパク質源はない可能性大。これらがあったら昆虫を食べる必要はない。

 ・あるいはこう言った食材は全部存在するが、精神疾患で虫を食べてる可能性もある。

 ・ドラゴンライト教の教義で昆虫食を食べてる可能性大。虫を食べると徳が積まれるとか?

 ・そもそも何で昆虫食?アシュリーの話では、この国はリサイクルやエコがブームと言っていた。食文化というよりも環境問題で昆虫食をやっているのかもしれない。


 まだまだ理解できない事が多いが、昆虫だけはどうしても食べたくない。幼稚園の時、給食にハエや蛾が混入していた事件があり、お腹を壊した記憶もある。当然、幼稚園の給食を作った業者は責任問題に問われ、廃業になった。


 昆虫食がOKとなれば、こういう事件も事件で無くなったりするのだろうか。その事も思い出し、昆虫食は絶対食べたくない。


「うぇ、きもちわるいよぉー」


 ルースのカフェで見た昆虫食の数々も思い出し吐きそうになるが、ここで負けるわけにはいかない! 脳筋ゴリラの名が廃る!


 とりあえず森にある果実は食べられる事はわかった。次は川を探して魚を探そう。


 そう決意した時、目の前にモコモコしたものが飛び込んできた。


「何これ。可愛い!」


 モコモコしたものは、ぬいぐるみかと思ったが、動物だった。茶色い毛並みは柔らかで、甘い香りもした。日本で言えば犬にそっくりの動物だったが、かなり人懐っこく涼子に抱きついてきた。今の一人ぼっちの涼子にとっては、見ているだけで癒される。


 垂れた目もとても優しそうだった。涼子が抱きしめ返すと、このモコモコした動物はキャンキャン吠えていた。思わず涼子の胸はキュンとときめく。昆虫食が根付くトンデモ村だが、動物は可愛い。もしかしたら動物が可愛くて殺せないから、虫を食べている可能性もあるかも。


「おーい、モコ! どこ行ったんだ」


 そこに一人の青年が現れた。ジョンではなかった。ゴリラのようなルックスのジョンと違い、この青年は繊細そうなルックスだった。虫も殺せぬ優しそうな顔立ちだった。何処かで見た事があるような顔だが、全く思い出せない。たぶん、芸能人の誰かと似ているのだろう。


 服装は白いシャツにチノパンという清潔感のあるものだった。ジョンは汚らしい雰囲気だったが、この青年は普通に現代的で清潔感がある。背は高いが顔色はとても悪そうだった。イケメンの方であるが、具合が悪そう。どちらといえば残念イケメンの種類に分類されそうだとも思った。


 金髪で、少し茶色がかった目。顔は濃すぎず、日本人の遺伝子を感じた。


「もしかして、アランさんですか?」


 アシュリーの情報も思い出すと、目の前にいる青年は、どう考えてもアランだった。


「そうだよ。さっきアシュリーから全部話を聞いてこっちに戻ってきたんだ。まあ、初見で昆虫食はキツいよね」

「キャン!」


 アランの言葉にモコモコとした動物が同意していた。


「この子はあなたが飼ってるの?」

「そうだよ、可愛いよねぇ。モコって名前だよ」


 モコは涼子の腕を離れると、アランの胸に飛びついていた。どうもアランは、まともな人のようで気が抜けてきた。


「おい、お前ら何やってんだ?」


 そこにジョンがやってきた。片手にはミミズを持ち口に入れていた。しかも美味しそうに食べていた。


 涼子は、再び悲鳴を上げたが、ジョンもアランも平然とした顔だった。気持ち悪さに倒れそうになるが、どうにか正気を保つ。


「まあ、とりあえず、うちに行って休憩しようか。ここで立っていてもしょうがないからさ」


 吐きそうになりながらも、アランの提案に頷いていた。

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