最後の試練 【月夜譚No.235】
パソコンの画面をいくら見つめても、何も変わらない。けれど思考が働かず、ただ見つめることだけに徹して瞬きを忘れ、目の乾きを自覚して初めて我に返った。
彼は頭を抱え、パソコンの前に突っ伏す。このままでは無為に時間が過ぎるだけで、何の解決にもならない。
少しだけ顔を上げてカレンダーを見ると、〝〆切〟の二文字は変わらずそこにある。
全く終わっていない、というわけでは決してないということだけは、彼の為に言っておこう。少なくとも、数ページはできている。……が、先はまだ長い。
まだ時間はあるとのんびり構えていた彼の自業自得ではあるが、これが提出できなければ、卒業は絶望的である。コツコツと積み上げてきた単位も水の泡、入学費及び授業料を払ってくれた親にも顔向けできない。
彼は重い腕を持ち上げ、どうにかこうにか脳の働きを上げることに集中する。
卒業論文の〆切まで、残り数週間。この試練を乗り越えられるかどうかは、彼の集中力にかかっていた。